研究課題/領域番号 |
17K05041
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
斎藤 全 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (80431328)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光弾性定数 / リン酸塩ガラス / ガラス構造 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続いて,BaOを含有したリン酸塩ガラスの組成開発を実施し,2つの組成系において,非常に小さい光弾性定数を有するガラスを見出した。このことは,ゼロ光弾性(< 0.05 B),高屈折率(> 1.85),良耐候性(< 10-10 kg/mm2)を有するリン酸塩ガラスを提案したことに相当する。これらのガラス組成を含む,組成系に対する構造解析を実施した。未だ解析の途中ではあるものの,高分極率カチオン(Ba2+)の酸素配位数,PO4四面体の連結構造をそれぞれ,中性子線回折,核磁気共鳴法で調査し,ゼロ光弾性ガラス構造の特徴を提示できる段階まで至っている。 BaOを高濃度に含有するリン酸塩ガラスでは,SnOを含有するガラスとは異なり,リン酸塩ネットワークの変化に敏感ではない。ガラスの加工性の容易さに関係する熱的特性として粘度,結晶化性を取り下げた場合,BaO含有リン酸ガラスの軟化温度は500度程度で,軟化中に熱的に結晶化する可能性は低いと言える。一方,ガラス化範囲はSnOを含有するリン酸塩ガラスの方がワイドであり,光弾性定数の符号に関して,正,零,負のいずれの符号を有する組成がガラス化範囲内において作製可能である。SnOがガラスの網目構造形成に寄与するのに対して,BaO中のBa2+のイオン半径が大きいことに起因して,光弾性定数の負符号を有するガラスが作製できない。これらの成果について,現在,International Journal of Applied Glass Science誌に投稿中,J. Non-Crystalline Solids誌から4報,physica status solidi (b) 誌から1報,Japanese Journal of Applied Physics, Rapid Communication誌から1報出版されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までに得ている知見としては,リン酸塩ガラスにおける低光弾性を有するガラス構造には,長鎖のリン酸と短鎖のリン酸(リン酸四面体2分子程度)がバランスする必要があると結論付けるに至っている。すなわち,長鎖のネットワークが高分極性イオンを包み込み,ニッチな場所を短鎖ユニットが空間的に補填して,ガラス構造全体の電子分極率を一様にしているモデルに相当する。低光弾性を示すガラスの具体的な構造の提示と,光学物性の比較を行うことができる点で,当初の計画以上に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
リン酸塩ガラスといってもリン酸と酸化物の割合,種類ともに多様である。高分極性イオン酸化物に特化して低光弾性を示すガラスの具体的な構造を調査してきたが,未知のリン酸塩ガラスの光弾性定数を予測できるような構造パラメーター,組成パラメーターの取得に取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年6月に研究成果に関連してInternational Congress of Glass 2019(Boston)にて招待講演が予定されているため。
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