H30年度ではSiが1%(原子組成比)混入したGa2O3ターゲットを用い、Arガスをプラズマ化してスパッタガスとし、Al2O3基板上にGa2O3を室温にて約1um堆積したサンプルに対して窒素雰囲気にてアニールを行った結果を報告した。800℃、10分間のアニールによって最も電気伝導率の高いサンプルが得られ、Siがドナーとして機能していることが示唆される結果が得られた。一方、10分以上のアニールを行うと、伝導率は逆に低下した。長時間のアニールによりSiがSiO2に変化していることや、窒素雰囲気でのアニールのため、酸素空孔が発生し、それが電子トラップとして機能していることが原因となって、伝導率が減少したのではないかという考えの元、R1年度は窒素の代わりに酸素雰囲気としてアニールを行った。アニールの条件は窒素と同様、800℃とし、5~120分の間で変化させた。いずれの時間においても、窒素雰囲気でのアニールの伝導率の最大値(1.3×10-4 /Ωcm)よりも高い伝導率が得られた。また、時間が短いほど伝導率が高いという結果が得られた。伝導率の最大値は、5分間アニールでの0.5 /Ωcmであった。窒素雰囲気でのアニールに比較して伝導率が増加したことから、酸素脱離が抑制され、高い伝導率が得られたと考えられる。一方、アニール時間の増加に従って伝導率が減少したことから、長時間のアニールにより、ドナーとして機能していたSiが酸化して、SiO2となり、サンプルが高抵抗化してしまったことが示唆される。 さらに高い伝導率のGa2O3を得るために、酸素雰囲気で5分より短いフラッシュアニールを試みた。これらのサンプルでは電圧―電流特性においてオーミック特性が得られず、電極の形成が不十分となったことが示唆された。このため、これらのサンプルでは正確な伝導率の値を測定することはできなかった。
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