研究課題/領域番号 |
17K05047
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
大島 祐一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (70623528)
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研究分担者 |
Garcia Villora 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (90421411)
島村 清史 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (90271965)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 酸化ガリウム |
研究実績の概要 |
(1) ε-Ga2O3の結晶構造の検討 本研究のターゲットであるε-Ga2O3の結晶構造は、当初はPlayfordらによって六方晶系と報告されてきた。しかし最近、Coraらがサファイア基板上にMOCVDで成長させたε-Ga2O3膜の微細構造をTEMと電子線回折を用いて解析し、直方晶系のナノスケールドメインが面内で3回対称に回転配置することで、X線などのマクロな測定方法では疑似的に六方晶に見えることを報告した。Ga2O3の結晶構造は基板や成長条件によって様々に変化するため、このような報告が我々の製膜した試料にもあてはまるかは実際に検証する必要がある。そこで、我々はc面GaN、 AlNおよび(-201)面β-Ga2O3上にε-Ga2O3を成長させ、その微細構造解析をTEMと電子線回折により行った。その結果、いずれの基板上でも結晶構造は直方晶であることが明らかになった。また、β-Ga2O3基板上の膜では、skew-symmetric配置で測定した122のX線回折強度がAlN基板上の場合と比べて桁違いに強く、基板の結晶対称性を反映して面内の配向が大きく異なることが示唆された。
(2) ε-Ga2O3の選択成長 前年度に引き続き、選択横方向成長(Epitaxial Lateral Overgrowth, ELO)の検討を行った。前年度は、AlNテンプレートを用いて選択成長が可能であることを示したが、今年度はより経済的で大面積基板も入手しやすいサファイア基板を試み、この場合でもマスク形成やHVPEの条件を工夫することでε-Ga2O3のアイランドを形成できることを明らかにした。さらに、選択成長のシード層を高品質化する目的で様々なバッファ層を検討し、サファイア基板上に安定的にε-Ga2O3を成長させる条件を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度はε-Ga2O3のELOを推し進める計画であったが、上述のようにε-Ga2O3の結晶構造そのものに関しての重要な議論が生じたため、まずはその確認に注力した。X線回折測定の結果、AlN基板上では(-201)β-Ga2O3基板上に比べて直方晶であることを示すピークの強度が非常に弱く、両者の膜で結晶構造が異なるか、面内配向の程度が大きく異なることが示唆された。そのため、TEMおよび電子線回折によるさらに詳細な解析が必要となった。特に、六方晶ε-Ga2O3と直方晶ε-Ga2O3の差はわずかであり、その違いを確実に見分けるための電子線回折パターンのシミュレーションには慎重を要したが、前述のように結晶構造を明らかにすることができた。そのためにELOの検討に遅れが生じたが、バッファ層等の重要な知見が得られ、今後につなげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、前年度のELOの検討を本格的に推し進める。これまでの研究では、ELOが原理的に可能なことを示したものの、アイランド同士の会合や連続膜化には至っていない。また、イレギュラーなグレイン成長も多くみられる。このようなグレインは成長開始界面で発生していることがわかっており、結晶開始前の昇温段階で下地基板表面に何らかの変化が生じているためである可能性がある。そこで、まずは成長開始条件の精査や前述のバッファ層技術等を駆使してグレインの抑制を試みる。その上で長時間の成長を行い、高品質な連続膜の実現を目指す。ただし、前述の回転ドメインがELOによってどうなるのかは未知数であり、成長した結晶構造やドメイン構造に注視しながら進める必要がある。
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