研究課題/領域番号 |
17K05053
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤本 義隆 東京工業大学, 理学院, 研究員 (70436244)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グラフェン / ドーピング / 環境汚染物質 / 第一原理計算 |
研究実績の概要 |
本研究では、グラフェンの新しい機能の発現やそれらを利用した次世代電子デバイス材料としての応用への可能性に関して調べている。本年度においては、ドープされたグラフェンへの環境汚染型ガスの吸着性と、それに対応した電子の輸送特性に関する研究を行った。すでに、前年度において窒素やホウ素ドープグラフェン上のガス吸着性に関する研究を行ない、ホウ素ドープグラフェンでは、大気雰囲気中で一酸化窒素分子や二酸化窒素分子が強く吸着することを報告した。本年度では、これら毒性の高いガス分子の吸着と電子の輸送特性との対応関係性を明らかにし、グラフェン型センサーに応用できる可能性を示唆する結果を得た。一酸化窒素分子が吸着した場合と二酸化窒素分子が吸着した場合では、グラフェンの電気伝導度の変化率が、大きく異なることが分かった。そのため、吸着分子の種類の違いに対応して伝導度の変化率が異なることから、一酸化窒素分子と二酸化窒素分子といった分子の種類を、分子のレベルで識別可能であることが期待される。以上の結果から、ホウ素ドープ型グラフェンは、電界効果型トランジスタなどの電子デバイスに用いられることで、環境汚染型ガスである窒素酸化物分子だけを、大気雰囲気中で選択的に検出可能な電子デバイス材料であることが期待される。なお、本研究結果は、学術雑誌論文として出版され(Jpn. J. Appl. Phys. 58, 015005 (2019))、応用物理学会英文論文誌(JJAP)のSpotlight paperに選ばれている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度では、グラフェンへの環境汚染型ガス分子の吸着と電気伝導性との対応関係を調べた。その結果、ホウ素ドープされたグラフェンを、電界効果型トランジスタなどの電子デバイスに用いて、その電気伝導度を調べる事で、大気中の環境汚染物質である窒素酸化物ガスを選択的に検出できる可能性があることを明らかにした。このように、ドーピングによるグラフェンの機能化とその性質を利用した電子デバイス応用に関する具体例を提示できた。そのため、当初の計画以上に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針として、グラフェンへのドーピングによる欠陥構造と安定性や電子物性との関連性を明らかにし、電子デバイス応用への可能性を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議発表の招聘での参加費等の減額により、本年度に予定していた成果報告に関する支出を抑えることができたため。 今後の使用計画として、研究成果を公表するための会議参加費等に割り当てる。
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