研究課題
本年度では、前年度の結果を踏まえ、環境汚染・有害物質として、これまで取り扱ってきた一酸化炭素・二酸化炭素分子のみならず一酸化窒素・二酸化窒素分子に関する研究を展開した。ここでは、(8,0)カーボンナノチューブよりも、比較的直径の大きな(10,0)カーボンナノチューブを用いた。ホウ素ドープナノチューブでは、一酸化窒素および二酸化窒素分子と強く結合する。また、一酸化炭素と酸素分子とも比較的強く結合することが分かった。一方、窒素ドープナノチューブでは、一酸化窒素および二酸化窒素分子の吸着エネルギーは大きいが、一酸化炭素分子などの吸着エネルギーは小さい。次に、分子の吸着によってナノチューブの電子輸送特性がどのように変化するかについて調べた。ホウ素ドープナノチューブ上に一酸化窒素分子や二酸化窒素分子の吸着した場合では、伝導度は大きく変化しないが、一酸化炭素分子の吸着では伝導度が大きく変化する。窒素ドープナノチューブの場合では、一酸化窒素や二酸化窒素の分子の種類に依存して、伝導度が大きく変わることが明らかになった。これらの結果から、ホウ素ドープナノチューブは、大気雰囲気中で一酸化炭素分子のみを検出可能なセンサーデバイス材料として利用可能である。窒素ドープナノチューブは、大気中で一酸化窒素分子と二酸化窒素分子を個別に識別可能なセンサーデバイス材料として有力な候補であることが期待される。以上の結果は、アメリカ電気化学学会誌Journal of The Electrochemical Societyに出版された。
2: おおむね順調に進展している
グラフェンの曲率効果を利用したカーボンナノチューブの環境汚染・有害物質の吸着特性と電子輸送特性を調べ、ホウ素ドープや窒素ドープナノチューブがそれぞれ特定の環境汚染物質に対しするセンサーデバイス材料として機能することを明らかにした。
今後の方針として、カーボンナノチューブなどを用いて、曲率の影響に関連する研究を展開する。また、これらの結果から、電子デバイス材料への応用に関する知見も獲得する。
参加を予定していた学会や国際会議などの学術講演会が中止となり、会議参加登録費等の支出が必要なくなったため。今後の使用計画として、主に研究を遂行するために必要な計算機利用料と研究成果を公表するための経費に使用する。
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