研究課題/領域番号 |
17K05054
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
鈴木 勝 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (20196869)
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研究分担者 |
佐々木 成朗 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (40360862)
三浦 浩治 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (50190583)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ナノトライボロジー / 動摩擦 / エネルギー散逸 |
研究実績の概要 |
本研究は,ナノすべり運動によるエネルギー散逸に注目し,動摩擦がいつ・どこで・とのように起こるかの詳細を明らかにして,摩擦制御の知見を得ようとするものである。具体的な研究対象として,分子運動によるエネルギー散逸の制御と表面構造によるエネルギー散逸の制御を計画する。研究で利用するナノすべり運動によるエネルギー散逸測定は,申請者が開発した原子間力顕微鏡の探針と水晶マイクロバランスを組み合わせた実験装置(AFM-QCM装置)を改良して使用する。平成30年度は以下の2つのテーマの研究を行った。 (1)金基板でのナノすべりのエネルギー散逸について:金表面を試料として、ナノすべり距離と接触の有効ばね定数とエネルギー散逸について詳細な測定を行った。測定の結果は探針と水晶振動子の連成振動のモデルで良く説明でき、ナノすべり距離が金の格子定数より小さいときは速度の1乗に比例する粘性摩擦であり、表面ポテンシャルともに粘性定数を定量的に決定した。 (2)C60単結晶でのナノすべりのエネルギー散逸について:C60単結晶中のC60分子はおよそ260 K付近で分子回転が変化する相転移を起こす。この相転移での測定を目的として低温での測定を可能とするAFM-QCM装置の開発を行っている。平成30年度は予備実験として室温でのナノすべり距離と接触の有効ばね定数とエネルギー散逸の測定を行った。測定の結果、ナノすべり距離がC60分子程度になるとき有効ばね定数とエネルギー散逸の異常が起こることが明らかになった。これは探針による分子の回転が引き起こされたことによると説明される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度に実施した金基板でのナノすべりのエネルギー散逸の測定では、ナノすべり摩擦の有効的な表面ポテンシャルと粘性定数を定量的に決定できることを明らかにした。この研究内容を論文として報告の準備を行っている。以上、本研究により摩擦制御の重要な知見が得られたこと、論文での報告の準備を行っていることより(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は(1)金基板でのナノすべりのエネルギー散逸の研究は完成し、論文での報告の準備を行っている。また、(2)C60単結晶でのナノすべりのエネルギー散逸の研究は、予備実験として室温でのナノすべり距離と接触の有効ばね定数とエネルギー散逸の測定を行った。予備実験からナノすヘリでの有効ばね定数とエネルギー散逸の異常が観測されており、この異常の温度変化は興味深い。平成31年度は有効ばね定数とエネルギー散逸の異常の温度変化について研究を進める計画である。平成30年度は(1)のテーマについて集中的に研究を進めたことにより,AFM-QCM装置の開発の経費が一部未使用となった。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は分子運動によるエネルギー散逸の制御と表面構造によるエネルギー散逸の制御を計画し,2つのテーマとして(1)金基板でのナノすべりのエネルギー散逸と(2)C60単結晶でのナノすべりのエネルギー散逸について研究を行った。(1)については表面ポテンシャルともに粘性定数を定量的に決定できることが明らかになり、論文での報告を準備している。(2)については室温の予備実験より、ナノすべり距離がC60分子程度になるとき有効ばね定数とエネルギー散逸の異常が起こることが明らかなり、室温での詳細な実験を行った。これらのことにより、平成30年度は低温AFM-QCM装置の開発の経費が一部未使用となった。
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