研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続き窒化物半導体混晶(BAlNおよびBGaN)に注目して構造安定性およびその膜厚依存性を原子間ポテンシャルを用いた大規模計算により検討した。B組成と膜厚の関数とした構造状態図を作成し、膜厚が薄い場合(4層以下)においては全B組成領域で原子層物質としてのヘキサゴナル構造が安定となり得ることを見出した。また、B組成の増大に伴いヘキサゴナル構造が安定となる膜厚が増大するこも明らかにした。さらに、他のIII-V族およびII-VI族化合物半導体に対しても原子層物質の形成可能性を詳細に検討し、全16種類の化合物に対してその安定性を密度汎関数(DFT)計算(GGA近似)を用いて決定した。全ての材料において2層の膜厚ではハニカム(DLHC)構造が安定となり、膜厚の増大に伴い8員環と4員環で構成されるヘケライト構造が安定となることを見出した。特異な電子状態の探索に関しては、スピン-軌道相互作用を考慮したDFT計算およびハイブリッドDFT計算を実行し、これまでに提案されている化合物(GaAs, InAs, InSb, GaSb)に加えAlSbにおいてトポロジカル絶縁体と判断され得るバンド構造を持つことが見出された。デバイス応用を目指した計算として、DLHC構造の相変化メモリへの適用を検討し、DLHC構造を含む超格子構造の安定性を決定した。格子不整合度の小さい系においては超格子が安定となり、その候補としてGeTe/AlSbおよびGeTe/InSb超格子がその候補となり得ることを見出した。
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