研究実績の概要 |
(1)試料: p型のSi(100)基板上に, ドライ熱酸化によってSiO2膜を成膜した.膜厚は光電子の平均自由工程(数~数10 nm)より大きく一般には表面帯電が起きると予想される0.5,1.0,1.5,2.0,2.5,3.0 μmとした. これらを購入した後に,試料の裏面に形成された酸化膜をドライエッチングで除去した. (2)X線照射時のSiO2/Si試料の基板電流の評価: 放射光施設UVSORの真空チャンバーで,準備した試料にX線(Si1s 吸収端をまたぐ1820, 1850, 1880 eV:SiO2膜への侵入長さがそれぞれ7.2, 2.2, 2.3μm)を入射角度0度で照射して,基板電流を測定した. 基板電流はX線照射直後から時間とともに変化したので,時間の関数として測定した.入射X線強度は,試料直前に設置したAuメッシュとアース間を流れる電流でモニターして,試料間・測定間の比較のための補正に用いた. (3)結果1:基板電流のX線照射直後からの変化量はX線のエネルギーによって大きく異なった.また,変化量はSiO2膜厚が増えるとともに増大した.X線エネルギー1880eVの場合,そのX線侵入深さ(約2.3μm)と等しい膜厚まで単調に増大して飽和した.これらの観測結果は,帯電補償に関わるSi基板からSiO2表面へ向かう電子の輸送量が, X線侵入長とSiO2膜厚との両者に依存することを示している. (4)結果2:一方,SiO2/Si試料にX線を照射した際にSiO2表面から放出される電子数と,Si基板から上地SiO2膜へ注入される電子数を、Henkeの個体表面からの2次電子放出数に関する理論を応用して推定することを試みた.今後,これまで行ってきた表面電位測定ならびに基板電流測定で観測された帯電補償現象の考察に利用する予定である.
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