研究課題/領域番号 |
17K05081
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
庄司 一郎 中央大学, 理工学部, 教授 (90272385)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 複合構造レーザー / 常温接合 / ダイヤモンド |
研究実績の概要 |
本研究では,高排熱材料であるダイヤモンドとレーザー結晶Nd:YAG およびNd:YVO4 との異種材料複合構造レーザーを開発することを目的としている.最大のポイントは,複合構造の接合界面にレーザー光に対する無反射もしくは高反射のコーティング層を挿入し,複合構造レーザーの高出力化や高機能化を図ることにある.そこで,ダイヤモンドの表面に無反射コーティングを施し,そのコーティング層とNd:YAG結晶表面との常温接合を試みた結果,接合に成功した.これにより,レーザー結晶との複合化を行う材料がダイヤモンドに限らず何であっても,コーティングさえしてしまえば確実に接合できるようになり,汎用性が限りなく広がることが実証された. 作製に成功した複合構造に対して排熱特性の評価を行った.発熱によって生じた熱複屈折にともなう偏光解消度(デポラリゼーション) を測定した結果,単体のNd:YAGに比べて複合構造は1/2程度となり,排熱特性が大幅に改善されていることを確認した. さらに,作製した複合構造のレーザー発振実験を行った.励起光源には波長808 nm,出力40 Wのファイバ結合型半導体レーザーを用いた.Nd:YAG結晶単体では入射励起パワー19 W程度で出力が飽和し,20 Wを超えると熱破壊が起こった.一方,複合構造では入射励起パワー30 Wでも問題なくレーザー発振したと同時に,接合界面に無反射コーティング層を挿入したことで界面での反射損失を抑制した結果,閾値が単体と等しく,また,スロープ効率も単体と同等になった.また,界面に無反射コーティングを施さず直接接合した複合構造に比べ,出力が20 %以上向上した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では,平成29年度は接合界面にコーティング層を有する複合構造レーザーを作製し,その排熱特性を評価することが目標だったが,複合構造の作製に成功して排熱評価も行ったうえに,平成30年度の計画としていたレーザー発振実験も行い,複合構造がレーザー結晶単体と同等のスロープ効率を有し,かつ,はるかに大きな入射励起パワーで動作可能であることを実証できたため.
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今後の研究の推進方策 |
まず,Nd:YAG/ダイヤモンド複合構造について,レーザー光のビーム品質を,ビームプロファイラを用いてM2 値を測定することによって行う.これにより,熱レンズ効果の比較を行う. 次に,複合構造高出力マイクロチップレーザーの作製および評価を行う.マイクロチップレーザーは単一縦モード動作をさせるために入出射端面に高反射コーティングをする必要があり,複合構造を作製することはこれまでは不可能であったため,低出力のものしか存在しなかった.本研究で常温接合を用いて初めて複合構造を作製することにより,単一縦モードでかつ高出力なモノリシックレーザーが実現可能であることを実証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度はNd:YAG結晶を用いた複合構造の作製に注力したため,Nd:YVO4結晶を購入しなかった.したがって,次年度使用額が生じた.平成30年度はNd:YVO4結晶を用いた複合構造の作製を行うため,平成30年度の助成金と合わせてその購入費用に充当する.
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