本研究では,高排熱材料であるダイヤモンドとレーザー結晶との異種材料複合構造レーザーを開発することを目的としている.特に,複合構造の接合界面に レーザー光に対する無反射もしくは高反射のコーティング層を挿入した構造を常温接合によって実現することで,複合構造レーザーの高出力化や高機能化を目指 す点がポイントである.昨年度は,複合構造高出力マイクロチップレーザーの開発を目指し,厚さ0.1 mmのYb:YAG結晶を用い,その両側に厚さ3 mmで接合界面側に高反射コーティングを施した無添加YAGを貼り合わせた構造を,常温接合により作製することに成功した.また,レーザー発振にも成功したが,出力は数十mWにとどまっていた. 今年度は,昨年度作製したYb:YAGと無添加YAGとの複合構造マイクロチップレーザーの高出力化を目指した研究を行った.励起光の入射パワーを大きくすると出力が飽和して発振が停止するため,複合構造でもレーザー媒質が薄いときには熱効果が顕著になると考えられる.そこで,媒質の歪みを小さくすべく,励起光の集光ビーム系を大きくしたところ,出力が昨年度の10倍程度の数百mWまで増大させることができた.さらに,この知見を活かし,全く新しい構造のマイクロチップ複合構造を考案し,その作成準備に着手した. 今後はYb:YAGマイクロチップ複合構造レーザーの縦モード特性等の詳細な評価を行うとともに,新たに考案した構造を試作,評価する予定である.
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