研究課題/領域番号 |
17K05082
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
行方 直人 日本大学, 理工学部, 准教授 (20453912)
|
研究分担者 |
鹿野 豊 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特任准教授 (80634691)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 偏波干渉計 / 相関光子対 / 量子シミュレータ |
研究実績の概要 |
非万能量子計算である量子ウォークや量子ボソンサンプリングが注目されているが、それらの大規模実装に関しては、平面光回路技術の進歩とともに規模拡大が試みられているものの、未だ道半ばである。本研究は、偏波保持ファイバ(PMF)系による極めて簡素かつ低損失な系による多光子干渉回路を提案し、それによって非万能量子計算の大規模実装が可能かを検証するものである。平成29年度においては、PMF系による2光子干渉の原理検証に成功した。平成30年度においては、量子ウォークのように1次の干渉が必須となるような系の実現も可能とするため、光の波長オーダー以下の光路長安定性の実現を図った。また、より高度な量子シミュレータを実装するため、光変調器によるPMF偏波干渉回路の再構成可能性の検討を行った。 PMFファイバを3本直列に接続して偏波干渉計を構築し、1次の干渉明瞭度、その光路長(PMFファイバのs軸とf軸間に生じる)安定性を評価した。波長1550nmにおいて、干渉明瞭度は99%を実現し、良好な干渉計となっていることが確認された。光路長はPMFの温度に敏感であるため、PMFの温度安定化を試みた。今回、恒温水槽(温度安定度±0.1 K)を独自構築し、それに液浸されたPMFの光路長は、他から圧力・応力等の大きな入力がない限り波長オーダー以下で安定化された。 ニオブ酸リチウム進行波型位相変調器(LNPS)を用いることで、PMF偏波干渉回路の再構成可能性獲得を試みた。LNPSの位相変調軸に対してPMFのs軸を22.5度だけ回転させ、さらにLNPSに0、π電圧を印加することで、ビームスプリッタ―演算の有無を制御することができた。現時点では、PMFのs、f軸間の位相差に任意性を残しているが、これはLNPSへ印加する直流電圧によって制御が可能になるだろう。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
30年度までに、偏波保持ファイバ(PMF)によるビームスプリッタ系の実装、光路長安定化、PMFによる干渉回路網の再構成可能性獲得までの基礎研究を終えた。波長1550nm帯における時間相関光子対発生や、それを用いた伝令付き単一光子源も終えている。しかし、それらを統合した量子シミュレーション実験が完了していない。他手法による量子シミュレーション実験においては技術的進展があり、それらを規模・次元の面で超える実施のために当初の研究計画の見直しも同時に行ったため、進捗がやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、先ず、PMFによる偏波干渉回路による量子ウォーク実験を実施する。実施規模に関しては、他手法による量子シミュレーション実験において技術的進展があったため、それを超える規模の達成を目標としたい。現在構築しているPMFファイバ回路をそのまま用いた限り、目標とする規模の実施は困難である。したがって、現在の系をファイバカプラを利用したループ型へと改造し、PMFファイバ回路系をカスケード接続した系をシミュレートできるようにしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用する光源の変更に伴う光学部品の変更やLN位相変調器(特注)の価格が予定時から変動したことにより差額が生じた。次年度に予定している実験では、実験計画の変更に伴い、追加で光学部品が必要になる。したがって、当該繰越金は次年度予算と合わせて、それらを購入するために使用する。
|