研究課題/領域番号 |
17K05083
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
渡邉 歴 立命館大学, 理工学部, 教授 (90314377)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ディジタルホログラフィー / すりガラス / 散乱 / 拡散 / 干渉 |
研究実績の概要 |
生体組織,霧,不透明なガラスのような散乱または拡散媒体を通して画像化する技術が注目を集めている.散乱媒体,拡散媒体は,透過画像の品質を著しく低下させるため,光を用いて散乱媒質や拡散体の奥の物体の可視化は難しく技術が限られている. 本研究では,光の干渉により散乱体内部の物体を高速にかつ広視野で可視化することを目的とする.ディジタルホログラフィーは物体の複素振幅分布を記録することにより,物体光の波面をコンピュータ上で再生することが可能である.レンズレス―ディジタルホログラフィック光学系を構築し,すりガラスの向こう側の強度と位相を再構築できる新たなアルゴリズムにより,すりガラスの奥に置かれた物体の振幅と位相の算出を試みた.光源から出た光を物体光と参照光に分け干渉させて干渉縞をつくり振幅と位相情報を撮像素子に記録する.次にこの記録した干渉縞からカメラ面でのすりガラスの強度分布と位相分布を求め,カメラ面でのすりガラスの複素振幅を求める.その後,すりガラスの向こう側に物体を設置して,カメラ面でのすりガラスと物体の複素振幅を求める.カメラ面からすりガラス面までの光逆伝搬を計算し,すりガラス面でのすりガラスと物体の複素振幅を求める.先ほど求めたカメラ面でのすりガラスと物体の複素振幅とすりガラスの複素振幅からすりガラス面での物体の複素振幅を求める.すりガラス面での物体の複素振幅をすりガラスから物体までの光逆伝搬を計算することで物体面での物体の複素振幅分布を求められる.すりガラスと撮像素子の距離,すりガラスと物体の距離を変化させ,すりガラスの奥の物体の振幅と位相を算出した.また,本手法の分解能を測定した.提案手法によって得られた強度分布と白色光による照明と比較を行いその有効性検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レンズレスディジタルホログラフィーにより,すりガラスの向こう側に配置された物体の複素振幅の再構成方法を提案し,その有効性を検証した.レンズレスディジタルホログラフィー光学系を試作し,位相シフト法にてテストチャートの強度情報と位相情報を記録し,物体面の再生,分解能の測定を試みた. すりガラスの奥に配置された物体の複素振幅を再構成するアルゴリズムを考案しすりガラスの奥に配置された物体の強度分布,位相分布の算出を試みた.その結果,すりガラスの奥に配置された物体の可視化を行った.提案手法による分解能を測定し,分解能は約70 ミクロンであることがわかった.提案手法によって得られた強度分布と白色光による照明と比較を行いその有効性を検討した. 再構成された強度分布はすりガラスがない場合の強度分布と比較してコントラストが低下することやカメラとすりガラスの距離を大きくすることによって再構成した強度分布,位相分布に雑音が発生するが,ディジタルホログラフィーによる複素振幅の測定と光の逆伝搬計算によりすりガラスと物体の距離が一定でなくても物体の映像を再生することができることを示した.
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今後の研究の推進方策 |
物体として位相変化を有する物体を計測対象として用い,すりガラスの奥に配置された物体の位相情報が再構成できるかを検討する.位相物体として,空間光変調素子を用いる予定である. 異なる波長の光源を用いた光学系を作製する.拡散角,ならびに,厚さが異なるすりガラスを通して,すりガラスの向こう側の物体の強度情報と位相情報を抽出する.次に,散乱性媒質中での物体の強度情報と位相情報を抽出する. 高速検出のために,機械的走査が不要なシングルショット位相シフトディジタルホログラフィック光学系により,物体の高速取得を試みる.あるいは,シングルショット位相シフト法を導入する.また、機械学習を用いたイメージングも検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)残額で必要かつ購入できる物品がなく次年度に有効活用するため.
(使用計画) 今年度の使用額と合算し、光学部品,試料などの消耗品に使用し,有効活用する.
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