コヒーレント加算技術を用いたレーザーパルスのパワーあるいはエネルギーの増強に関する研究を進めている。連続波のレーザーに関しては、この技術は空間光を用いた実績があるが、連続波は、連続波レーザーはそのスペクトルが非常に狭く、光波の単一位相(2π)の整数倍のずれが生じても、可干渉距離よりも十分に短い位相差であれば高い消光比で干渉が可能であるからである。 本研究では、短パルスレーザーの加算を目標とした研究を進めている。短パルスレーザーは、フーリエ変換の関係に基づき、短パルス化と共にスペクトル幅が広がる。それ故、可干渉距離が極めて短くなり、加算すべき複数の光波を、位相差の無い状態(0π)で重ね合わせなければパルスの加算ができない。 パルス幅100フェムト秒程度の短パルスは、スペクトル幅が数十ナノメートル程度まで広がる。このパルスの加算を実現するために、100ナノメートル未満の分解能で位相差を制御できるファイバ光学系を開発した。また、この技術を応用して、単一のパルスを分岐し、複数の光増幅器により増幅し、その後合波するシステムを開発し、各光増幅器から発せられる誘導放出された蛍光に起因する光雑音の低減のための手法を開発し、実験により検証を行った。その結果、単一の光増幅器による高出力化よりも低雑音化が可能であるという結果が得られた。 さらに、単一のシングルモードファイバコア内での光増幅は、単位断面積あたりの光パワーである輝度の増加により、誘導ラマン散乱ならびに誘導ブリルアン散乱に代表される各種の非線形効果が発生し、その出力が制限され、最終的にはファイバのコアガラスの損傷に至る可能性すらある。これを解決するために、複数のコアから得られた光出力の位相を制御し、空間で光波を合波する検討を進め、7つのコアから得られた出力をコヒーレント共振器結合の技術により空間合波が可能と考えられる結果を得た。
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