研究課題/領域番号 |
17K05086
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
長島 健 摂南大学, 理工学部, 准教授 (60332748)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | テラヘルツ / エリプソメトリー / 異方性 |
研究実績の概要 |
テラヘルツ帯時間領域分光を用いた反射型エリプソメトリー(THz-TDSE)の光学系を作製した.時間領域分光のための光学遅延には高速自動ステージを用いた.試料を面内で回転させながら各回転角で拡張エリプソメトリック角スペクトルを取得できるようにした.入射角設計値は70度であったが,作製後に標準試料(シリコン基板)を用いて確認したところ,実際の入射角は68度程度となった. エリプソメトリーでは入射面に平行及び垂直な反射電場成分を計測し,試料の光学定数を導出する.正確な光学定数導出のためには,入射面の精密決定が必要である.本研究では表面プラズモンポラリトン(SPP)を用いたテラヘルツ帯エリプソメトリーにおける入射面精密決定法を提案している. 平坦な試料ではSPPを励起できないが,金属表面に周期溝配列を付与することで,テラヘルツ波回折光とSPPを結合させることができる.テラヘルツ波照射により周期溝配列試料に励起されるSPPの周波数及びSPPによるエネルギー吸収から,入射面の方向を特定できる. この実証のため,無酸素銅試料に周期0.3mm,溝幅0.15mmの周期溝配列を作製した.試料のテラヘルツ反射スペクトルを測定したところ,反射率スペクトルに急峻なディップ(窪み)が生じ,SPP励起が確認された.試料を面内で回転すると,SPP周波数及びその周波数での反射率が概ね予想通り変化し,入射面決定可能性を実証できた.SPPと結合するテラヘルツ波回折光の次数が高くなるほど,SPP周波数の変化が大きくなる.実験では3 THz付近の6次回折光励起SPPまで観測された.このSPPは大きな周波数シフト及び反射率変化を示し,十分な精度での入射面方向決定可能性が示唆された. なお,本年度の実験結果を受け,特許出願を検討しているため,本報告書は2018年度末まで非開示とするよう希望する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
周期溝配列金属試料の設計及び製作に予想以上に時間を要したが,提案する手法の原理を実験的に概ね実証できた.
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今後の研究の推進方策 |
周期溝配列金属試料について,反射スペクトルの入射テラヘルツ波偏光依存性及び試料面内回転角依存性を詳細に測定する.入射テラヘルツ波偏光は試料直前のワイヤーグリッド偏光子を回転することで変化させる.SPP周波数は入射テラヘルツ波偏光には依存しない.一方で,SPP励起により入射面に正確に平行な偏光成分(p偏光)のみが吸収されるため,SPP周波数での反射率は,SPPが存在しない周波数の反射率に対して相対的に変化する.これより,正確なp偏光方向が決定できる. さらに試料面内回転角とともにSPP周波数がシフトするが,最も低い周波数のときに,周期溝方向と入射面が直交する.以上の2種の測定より,入射面方向を正確に決定する. 入射面方向を精密に決定した後,より正確なエリプソメトリック角を計測するため,光学系の各偏光子を入射面に合わせ微調整する.標準試料(高抵抗シリコン基板を予定)について調整しない場合と調整した場合とで,光学定数スペクトルを比較し,測定精度改善の程度を評価する.得られた成果をもとに上記手法の特許出願の後,原著論文を作成する. この後,異方性試料測定に向け,複数入射角システムの設計及び部品製作に着手する.複数入射角システムの組み立ては平成31年度を予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
主として光学系製作において自動ステージの一部を,部品の干渉(とりまわし)のために予備的に手動のものにしたため.自動化は必要なため,2018年度に自動ステージを購入し,光学系に組み込む.
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