エリプソメトリーでは入射面に平行及び垂直な反射電場成分を計測し,試料の光学定数を導出する.異方性試料の正確な光学定数導出のためには,入射面の精密決定が必要である.本研究では表面プラズモンポラリトン(SPP)を用いたテラヘルツ帯エリプソメトリーにおける入射面精密決定法を提案している. 平坦な試料ではSPPを励起できないが,金属表面に周期溝配列を付与することで,テラヘルツ波回折光とSPPを結合させることができる.周期溝配列試料にテラヘルツ波を照射することで励起されるSPPの強度及び周波数の試料面内角度依存性測定から,入射面方向を決定する手法について,2018年度までに原理実証に成功した. 2019年度は当該手法の優位性確認のため,次の異なる入射面決定法と比較をした.入射光電場が入射面に垂直・平行な直線偏光が一軸性光学結晶に入射したとき,一般に反射光は楕円偏光になる.ところが,試料結晶の光学軸が①試料面内かつ入射面に平行または直交する場合,または②試料表面に垂直な場合,入射光電場と直交する反射光電場成分がゼロになる(入射光の偏光状態が保持される)ことが知られている.このことを利用して,結晶方位のわかっている一軸性光学結晶を用いることで,入射面を決定できる. [001]軸が光学軸である一軸性光学結晶ルチル型二酸化チタン単結晶(100)基板を用いて,入射面の決定を試みた.試料を試料面内で回転させながら,入射テラヘルツ波電場と直交する電場を持つ反射テラヘルツ波を検出した.その成分が完全にゼロになる試料位置で光学軸が入射面と直交あるいは平行となるが,バックグランドノイズのため入射面決定精度は数度程度と低い値になった. これに対して本研究で開発したSPPを用いる方法では,入射面方向の決定精度はおおむね0.1度であり,精度の高い方法であることがわかった.
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