4光波混合によるシリコンリング共振器を用いて通信波長帯time-bin量子もつれ光源の開発を実施した.1つのシリコンリング共振器で,2対の量子もつれの同時生成に成功した.この量子もつれの発生はポンプ光にCW光源を用いて成功した.またこの同時生成時にシリコンリングの結合部分での反射による共振増幅が観測され,量子もつれ生成の高効率化に成功した.これはシリコンリング内での反射による定在波の発生により,量子もつれの生成効率が向上したと推察され,々の知る限り,この実験結果は世界で初めての例となり,Optics Express誌に掲載された.さらに,この量子もつれ発生の高効率化を目指し,ポンプ光のエネルギー密度の向上を図り,パルス化(パルス幅100ps程度)を実施した.しかしながら良好な量子もつれを得られなかった.量子もつれの指標としてvisibility を用いる実験において,古典限界1/√2を超えることができなかった.本実験の量子もつれはtime-binを使用している.time-bin量子もつれ生成に用いる1ビット遅延干渉計の遅延時間を800ps~2.5nsに変化させて実験を実施したが,visibility の改善は見られず,同程度のvisibilityにとどまった.この結果からパルス光のような高いエネルギー密度の光入射によりシリコンリング内の物性の変化があり,量子もつれの生成が困難になったと推論し,量子もつれによるシリコン物性の評価とう視点での解析を進めている.少なくとも2.5ns以上の時間で近々その結果をまとめ論文化する予定である.
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