非侵襲生体イメージングで脚光をあびる光超音波診断を非接触で実現するための検出器となるフォトリフラクティブ(PR)ポリマーの高性能化に取り組んだ。PR効果の発現原理に立ち返ると、素子性能を決定する屈折率変化と応答速度の間には原理的なトレードオフが存在する。本研究では、このトレードオフを本質的に打破するブレークスルー技術として光応答性トラップを導入した新原理に基づくPRポリマーを創製し原理実証をすることを目的とした。 光応答性トラップとしてジアリールエテン分子に着目し、その単膜において、紫外光を用いた外部光刺激によってHOMO凖位が変化することを確認した。一方で、分散膜については明確な変化は観察されず、トラップとして導入するジアリールエテン濃度の最適化および分散性の向上が必要であることを示唆する結果となった。本結果から、一様分散性および波長感度の長波長化を念頭に、新規アゾ化合物への展開を検討した。 一方、本原理検証で重要となる、電気特性、およびPR特性を評価するための測定装置を整備し、暗・光電流の過渡応答、さらに素子の性能を決定する屈折率変化と応答速度を高精度に測定できる評価システムを構築した。また、光応答性トラップの動作検証に向け、タイムオブフライト法によるキャリア移動度の評価方法について検討を行い、キャリア移動度に対する低分子トラップの添加効果、および光感光剤の添加効果について詳細に調べた。 本研究を通じて、目標とした新原理に基づくPRポリマーの原理実証には至らなかったが、デバイス性能へ向けた材料選択の方向性の決定およびPRポリマー中で生じる複雑な光・電気特性に対する高確度な評価手法を確立することができた。
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