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現在のがん治療において増殖能が高く，抗がん剤や放射線に強い抵抗性を示す，がん幹細胞の死滅は非常に困難であり，新たながん治療法の探索が急務となっている．このような課題に対し，本研究では，プラズマ照射細胞培養液などのプラズマ処理溶液を投与することで，がん幹細胞の選択的死滅現象の発現を実現することを目標としている．昨年度までに，プラズマ照射により，多種多様なアミノ酸の特にメチオニンとトリプトファンが顕著に酸化・分解することを明らかにした．また，その原因として，プラズマ/液体相互作用によって生成されるOHなどの短寿命活性種が，酸化・分解反応を大きく促進することを見出した．本年度は，プラズマ処理したメチオニン水溶液とトリプトファン水溶液を子宮類内膜腺がん細胞(HEC-1)に投与し，プラズマ処理アミノ酸水溶液のがん細胞殺傷効果を詳細に評価した．その結果，プラズマを照射した純水に比べ，プラズマ照射メチオニン水溶液，並びにトリプトファン水溶液でがん細胞生存率が大きく低下することを新たに見出し，短寿命活性種以外のメチオニンとトリプトファンからの新たな生成物が，がん細胞殺傷に大きく寄与することを明らかにした．さらに，がん幹細胞とがん非幹細胞の判別を，ALDH(Acetaldehyde Dehydrogenase)の活性度を評価することにより行った．その結果，プラズマ照射メチオニン水溶液とトリプトファン水溶液の投与後のがん細胞群では，幹細胞の割合ががん細胞全体の5-6%程度となり，プラズマ未照射の20-30%から大きく減少した．このように今回，プラズマ照射アミノ酸水溶液が特にがん幹細胞の殺傷に有効であることを示唆する結果を得た．
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