研究課題/領域番号 |
17K05114
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
岩瀬 謙二 茨城大学, 工学部, 准教授 (00524159)
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研究分担者 |
佐藤 博隆 北海道大学, 工学研究院, 助教 (30610779)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 水素貯蔵 / 小角散乱 / 結晶構造 / ナノ構造 / XRD |
研究実績の概要 |
29年度は、Pr‐Co2元系超格子型水素吸蔵合金の試料合成条件の確立、水素吸蔵放出特性、水素化物相の結晶構造解析、X線小角散乱による表面構造解析を実施した。 合金試料は、アーク溶解および熱処理によって作製した。溶解時における試料の反転回数、熱処理時の処理温度、処理時間を確立することが出来た。アーク溶解では、反転回数を7回に決定した。組織均質化のための熱処理は、900℃、1000℃、1050℃、1075℃、1150℃で実施した。不純物相を減少させ、克主相を成長させることができる温度が1075℃であることが分かった。更に主相を成長させるために熱処理時間を5時間、10時間、20時間で実施した。熱処理時間が5時間の場合、主相を最も成長させることが出来た。 水素吸蔵放出特性に関しては、比較的は高温域で吸蔵・放出が可逆的に行われることが得られた。140℃、160℃、180℃でPCT曲線の測定を行った結果、似た形状の曲線を示し温度依存性は確認されなかった。吸蔵・放出過程に於いて、明瞭なプラトー領域は2つ存在していた。 吸蔵過程における結晶構造変化について、XRDを用いて調べた。吸蔵前の六方晶から六方晶(水素化物相I)→斜方晶(水素化物相II)に構造変化していることが分かった。 XRDを行った吸蔵前の合金試料、水素化物相I、水素化物相IIに対してX線小角散乱測定を行った。高q領域の超格子反射ピークを捉えることが出来た。Q領域1~3 nm-1では、明瞭なプロファイル変化を確認した。Q領域0.07~0.6 nm-1のプロファイルの傾斜から、水素化物相II表面のナノ構造が滑らかに変化していることが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度は、Pr‐Co2元系超格子型水素吸蔵合金の試料合成条件の確立、水素吸蔵放出特性、水素化物相の結晶構造解析、X線小角散乱による表面構造解析を実施した。 合金試料は、アーク溶解および熱処理によって作製した。溶解時における試料の反転回数、熱処理時の処理温度、処理時間を確立することが出来た。アーク溶解では、反転回数を7回に決定した。組織均質化のための熱処理は、900℃、1000℃、1050℃、1075℃、1150℃で実施した。不純物相を減少させ、克主相を成長させることができる温度が1075℃であることが分かった。更に主相を成長させるために熱処理時間を5時間、10時間、20時間で実施した。熱処理時間が5時間の場合、主相を最も成長させることが出来た。 水素吸蔵放出特性に関しては、比較的は高温域で吸蔵・放出が可逆的に行われることが得られた。140℃、160℃、180℃でPCT曲線の測定を行った結果、似た形状の曲線を示し温度依存性は確認されなかった。吸蔵・放出過程に於いて、明瞭なプラトー領域は2つ存在していた。 吸蔵過程における結晶構造変化について、XRDを用いて調べた。吸蔵前の六方晶から六方晶(水素化物相I)→斜方晶(水素化物相II)に構造変化していることが分かった。 XRDを行った吸蔵前の合金試料、水素化物相I、水素化物相IIに対してX線小角散乱測定を行った。高q領域の超格子反射ピークを捉えることが出来た。Q領域1~3 nm-1では、明瞭なプロファイル変化を確認した。Q領域0.07~0.6 nm-1のプロファイルの傾斜から、水素化物相II表面のナノ構造が滑らかに変化していることが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は、Pr-Co合金の試料合成条件、水素化特性評価、吸蔵過程における結晶構造・表面のナノ構造変化を捉えることが目的であった。 試料合成条件および再現性を確認できたので、30年度以降の実験時の試料準備に影響が出ないことが考えられる。溶解法を高周波誘導溶解からアーク溶解に変更したが、大きな影響はなかった。 最大吸蔵量、サイクル特性、平衡水素圧、水素化物生成熱(エンタルピー)等の基本的な吸蔵放出特性を定量化した。水素吸蔵前の合金相、水素吸蔵過程中の水素化物相I、水素化物相II(full hydride)の結晶構造(金属格子)パラメーターをRietveld解析によって精密化した。水素吸蔵量の増加化と共に、金属格子を形成するMgZn2-type cellとCaCu5-type cell体積が異方的に膨張することが得られた。特に、CaCu5-type cell体積膨張は顕著であった。今後のIn-situ中性子小角散乱実験の際の測定条件の検討のために、有意義なデータが得られた。 X線小角散乱測定の結果から、水素化物相内の金属格子に関するナノ構造を抽出することが出来た。最大吸蔵時には、表面構造がsmoothに変化していることが明らかとなった。中性子小角散乱実験データには、金属格子と水素からの情報が含まれているが、X線小角散乱データには金属格子のみの情報が含まれている。30年度に実施予定の中性子小角散乱データに対して、X線小角散乱結果を反映した解析が実施できることが可能となった。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費として、希土類元素の購入を予定していたが、昨年度の価格が高かったため購入を断念した。次年度に繰り越すことによって、今年度の予算と合算して希土類元素を購入する。
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