研究課題
H30年度において白色中性子ホログラフィーの開発は大きく進展し、いくつか重要な機能性材料において学術的な成果をあげた。まず、白色LEDとして注目されているSiCでのドーパント位置の決定に成功した。SiCはBをドープすることで輝度が大幅に向上することが知られているが、Bがどの位置に入るのかは測定法がなく、未解決であった。本基盤Cでの実験により、BがCと置換していることを解明した。この結果は第18回日本中性子科学会化学会年会で優秀ポスター賞を受賞した。熱電材料Mg2Siは軽量、安価、安全というメリットがあり、新しいエネルギー材料として注目されている。Mg2Siの性能向上にはBなどのドープが必要だが、本基盤Cでの実験により、Mg2SiにドープされたBはMg位置にはいっていることを解明した。希土類強相関原子系であるSmドープRB6t(R: Yb, La)において、原子像の虚部に物理的意味があることを示した。これは従来の理論では指摘されていないことで、散乱現象の新たな知見となった。この成果は、ヨーロッパ結晶学会国際会議ECM31においてJacek Grochowski Memorial Poster Prizeを受賞した。現段階での中性子ホログラフィーの課題は、大型の単結晶が必要な点である。その解決のため、H30年度には、粉末中性子ホログラフィーの開発を開始し、BドープSi粉末において有望な結果をえることができた。この結果は、新学術領域「3D活性サイト科学」報告会において大門賞を受賞した。ホログラフィーにおいて定量的解析には、シミュレーション計算との比較が必要だが、これまで中性子ホログラフィーでは公開されたシミュレーションソフトは存在しなかった。そこで本基盤Cの枠組みでソフト開発を行い、信頼できるシミュレーションソフトを構築した。
1: 当初の計画以上に進展している
上述のように多くの重要な機能性材料でドープ効果について具体的な新しい知見を得ることに成功し、2年目にして、中性子ホログラフィーの手法としてはほぼ確立することができた。その結果として、学会などで多数の受賞をしている。また中性子ホログラフィーとしては世界初となるシミュレーションソフトの開発にも成功し、定量的解析を可能にした。これらは、当初計画をかなり上回る早さでの進展である。
最終年度であるH31年度には、実際の機能性材料でのドープ効果の解明をすすめると同時に、粉末ホログラフィーの実現、および水素化物への挑戦を行う。最終年度であることから、発表を重視する。
分担者の年度末の出張計画に急な変更(キャンセル)が生じたため、次年度使用とした。これは分担者への分担金(旅費)にあてる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 9件、 招待講演 3件)
Phys. Status Solidi B
巻: 255 ページ: 1800143
https://doi.org/10.1002/pssb.201800143
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