研究課題/領域番号 |
17K05117
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
島田 紘行 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特任助教 (30542112)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 放射線 |
研究実績の概要 |
放射線防護や放射線医療等の多くの分野において、DNA分子の損傷過程を分子レベルでの理解に対するニーズが高まっている。そこで本研究では、放射線を照射した際にDNA分子の構造がどのように変化していくかを観測する実験を進めている。実験では放射線としてシンクロトロン放射光施設における単色化軟X線を用いる。単色化軟X線を用いることで、DNA分子内の特定の位置の原子に放射線のエネルギーを局所化させることが可能であり、一連の損傷反応過程のよく定義された初期状態を用意することが可能となる。一方、放射線による構造変化の検出法として、X線回折や質量分析などの手法も考えられるが、本研究ではラマン分光法を採用した。この手法の特徴として、・特定の位置の化学結合の変化を検出できる、・水溶液の表面状態だけでなく、水溶液中のバルクの状態も観測できる、ことが挙げられる。 本年度は上記のDNA分子への放射線の影響を調べるための、軟X線照射下における分子構造の変化を測定するためのラマン分光装置を設計した。当初は真空中に導入した水溶液資料の液体分子線に特化した装置を構築する予定であったが、以前の見積もりよりも信号強度が弱いことが想定された。液体分子線の形状と溶質濃度の上限が信号強度の大きな制限となっている。このため、利用可能な光学系と検出器の性能等を考慮し、液体分子線だけでなくより強い信号強度が見込まれる固体薄膜に対しても測定が行えるように装置の設計の変更を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の想定より液体分子線からの信号強度が弱いことが判明したため、光源や光学系、検出器の再選定を行った。また対象とできるターゲットを、当初の液体分子線のみから固体薄膜も対応可能な形状に変更し、より応用範囲が広がった。
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今後の研究の推進方策 |
液体分子線および固体薄膜の両方に対応できる新しい装置の設計がおおよそ完成したため、その設計に従い装置を構築する。その後、より信号強度の強い固体薄膜から始め、その後に液体分子線という順番で実際の測定に移る。
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次年度使用額が生じた理由 |
装置の製作に先立ちサンプル形状やサンプルの濃度、励起放射線強度等を正しく考慮に入れ信号強度の再評価を行ったところ、当初の想定よりも信号強度が弱い恐れがあることが判明した。このため、液体分子線だけではなくより信号強度の強い固体薄膜に対してもその測定が行えるように装置の再設計と再選定を行う必要があった。
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