研究課題/領域番号 |
17K05124
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
菖蒲田 義博 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 副主任研究員 (90370410)
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研究分担者 |
外山 毅 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (30207641)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 加速器設計 |
研究実績の概要 |
加速器のビームの大強度化は、物理実験で世界的な成果を得る上で必然的な流れであり、世界ではMW級の加速器が計画、建設、稼働中である。一般に加速器は、ビームを輸送するための金属製の真空容器に外側から磁場をかけてビームを制御する。ところが、この外場は真空容器表面に渦電流を誘起させるので、セラミック(絶縁体)を真空容器間に挿入し、これを抑制するのが一般的である。しかし、ビームが大強度化すると、ビームがセラミック部を通過する際に電磁場を発生させるようになり、この電磁場が逆にビームに影響してビームの加速を著しく困難にすることが分かっている。 ところが、近年、研究代表者らは、セラミック部に僅か数10nm金属をコーティングするだけでこの電磁場を遮蔽できることを理論的に示した。この厚さは、スキンデプスに比べて圧倒的に小さいので、この方法が正しければ、セラミックの持つ機能を阻害することなくビームを安定化できる。 金属でコーティングした場合としない場合でセラミックの真空容器から出てくる電磁場の強度の違いを測定で観測するためには、そのような2種類の真空容器を製作する必要がある。29年度は、このような2種類のセラミックの真空容器を製作した。これによって、ビームがセラミックの真空容器の内部に誘起する電磁場については、ネットワークアナライザーによって測定できるようになった。 一方で、我々は、セラミックの真空容器の外部に伝搬する電磁場の測定も同時に行う必要がある。この測定を精度よく行うには、電磁場が環境の影響で撹乱されるのを抑制するための特殊なジグが必要である。30年度はそのジグを製作し、セラミックの真空容器の内部の電磁場と外部の電磁場が同時に測定ができるような環境を整備する。そして、試験的な測定を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セラミックの真空容器にわずか数10nm金属をコーティングすることで、電波を十分遮蔽できることを測定で確認するには、まず、コーティングをした場合としない場合の2種類のセラミックの真空容器を製作する必要がある。29年度はメーカに依頼して、想定していた金額内で、この2種類の真空容器を製作完了させることができたから。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は、セラミックの真空容器から発生した電磁波が、環境の影響で撹乱しないように特殊なジグを製作する。このジグの製作は、研究分担者と協力して30年度内で完了させる。合わせて、ループコイルを製作し、セラミックの真空容器から外部に伝搬した磁場を測定できるようにする。実際の測定は、セラミックの真空容器に内導体を設置し、そこにビームを模擬する電気信号を送ることで行う。セラミックの真空容器の内部の電磁場はネットワークアナラザーでも測定する。まず、自分たちの実験室で予備実験をした後、電波暗室を使って、精度のよい測定を行うことにする。 31年度は、このような理想的な環境下での測定、解析結果をもとに、実際の加速器のビームを使って測定を行い、実証実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)H29年度に購入したセラミックブレイクが当初計画より安価で購入することができたため、次年度使用額が生じることとなった。 (使用計画)H30年度に予定しているジグの製作やループコイルの製作及び磁場測定に係る費用として使用する。
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