本研究は電子ビームを用いて大強度負水素イオンビーム荷電変換測定を行い、これまで明らかになっていない電子ビームによる荷電変換断面積を特定することを目的としている。まず、本研究での使用を目的として購入した電子銃の性能を評価した。電子銃を設置する予定のビームラインは放射線管理及び高電圧機器が近くにある関係上、簡単にはアクセスできないため、あらかじめオフライン試験にてその特性を明らかにしておく必要があった。そこで電子銃をオフライン試験機に取り付けてエミッタンスモニタを使用した電子ビームのエミッタンス測定及びビーム強度測定、電子銃使用時の真空圧力変化の調査を行った。その結果、購入した電子銃が本研究での要求性能を満足することを確かめた。また、電子銃据え付け用チェンバー及び測定用ビームモニタを製作して、大強度負水素ビームを生成可能なJ-PARCイオン源テストスタンドに取り付けた。現在、電子銃を用いた大強度負水素ビームの測定を行っているが、想定より荷電変換断面積が小さいのか、もしくは実験環境のノイズの影響なのか、残念ながら電子ビームによる荷電変換の兆候は掴めていない。令和2年度で科研費執行期間は終了したが、ノイズ対策などの対処を行いつつ継続して実験を行う予定である。これまで行ってきた研究成果を2020年加速器学会にて"負水素イオンビームの電子銃を用いた荷電変換に関する研究"の題目で発表した。
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