研究課題
次世代リング型光源に必要とされる1.5GHz帯の高調波空洞について、高周波空洞(Q値、シャントインピーダンスなど)と高周波源(電力、バンド幅など)に必要なパラメータを定量化した。具体的には高調波空洞の性能を数値的に評価するための計算コードを開発し、これを用いた評価を行った。計算コードは電子ビームトラッキングを主としたコードと等価回路モデルによる空洞応答を準解析的にモデル化したものを個別に作成し、相補的に用いた。これら評価により準回折限界蓄積リングに応用する上で十分な性能を有した常伝導高調波空洞の実現が可能であることが明確になった。さらに高周波システムの一部を新たなアイデアに基づいて拡張することで、これまで報告されてきた以上に高性能な高調波空洞システムが実現可能であることが明らかになった。また、このアイデアは既存の放射光施設でも適用可能であり、幅広い応用が期待される。これらの成果については査読付き投稿論文(PRAB)にまとめるとともに、国際会議(FLS2018)において招待講演として報告した。次に実際に高調波空洞を製作するため、3次元電磁界シミュレーションコードにおける空洞設計をおこなった。空洞設計では上記で明らかになった性能を満たしつつ、実際に次世代リングを運転する際に問題となる寄生モードの減衰構造について詳細な検討を行った。検討ではロッド方式とスロット方式の2種類の減衰構造について計算を行い、スロット方式を用いた方が高い空洞性能を実現できそうであることが明らかになった。これまでに次世代リング型光源の一つであるKEK放射光源に使用可能な性能をもった高周波空洞設計を得ている。今後さらに設計を進め、モデル空洞を製作する予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、常伝導高調波空洞の設計が進んでいる。次世代リング型光源に必要な空洞性能をは研究開始前に粗く見積もっていた範囲内の収まっており、研究の推進において当初の予定からの大きな変更は必要ない。さらに初年度に予定していたモデル空洞製作のための詳細設計作業もおおむね順調に進んでいる。
当初の予定通り、高周波空洞のコールドモデル(モデル空洞)の製作に向けて空洞詳細設計を進める。設計作業は現在、詰めの部分にさしかかっており、これが完了次第、モデル空洞の製作図面の作成、工作業者との相談にうつる予定である。また、同時に高周波減衰材料の評価も行っていく予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Phys. Rev. Accel. Beams
巻: 21 ページ: 012001
10.1103/PhysRevAccelBeams.21.012001
Proceedings of the 9th International Particle Accelerator Conference, IPAC’18
巻: 1 ページ: 4176-4179