研究課題/領域番号 |
17K05132
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
冨澤 正人 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (80197920)
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研究分担者 |
武藤 亮太郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (50392147)
岡村 勝也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, シニアフェロー (50415048)
新垣 良次 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 技師 (70625251)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 静電セプタム / 高電圧特性 / 真空特性 |
研究実績の概要 |
カーボンナノチューブを用いた遅い取り出し用静電セプタムが実現すると、遅い取り出しで必然的におこるビームロスを大幅に低減することが可能とな る。このビームロス低減により発生する2次粒子の抑制により、装置周辺の放射化、装置の放射線損傷が低減でき、これにより遅い取り出しビーム の大強度化が可能となる。 本年は、メーカーの協力のもと静電セプタムのセプタムに適合する直径80ミクロンのカーボンナノチューブワイヤーを製作した。ワイヤー1ドラムの長さは50mという長物の供給が可能となった。セプタムワイヤーの基礎試験をおこなうために、長さを約30cmに切断し、その両端に銅パイプをかしめる方法を確立した。銅パイプのかしめ方の工夫により、引っ張り強度は3N以上が得られた。 カーボンナノチューブワイヤーの真空特性、高電圧特性の基礎データを取得する目的で、同軸構造の内導体をカーボンナノチューブワイヤーとし高電圧をかけ、外導体をアースとする構造の試験機を製作した。この試験機の特徴は、低い電圧でワイヤー表面に高電場を発生させることができることである。その結果効率よく試験を行うことができる。目標となるワイヤー表面での電場20MV/mを、わずか5kVの印加電圧で到達する。これらの同軸構造は真空チェンバーに設置される。バックグラウンドとしての到達真空度は1x10-7 Paに達した。電場の向きを実際のセプタムと同じにするために、陽極性の電圧を内導体のワイヤーに印加した。電圧の上昇とともに、真空が悪くなりスパイクも観測されたが、目標の5kVまでの印加に成功した。この電圧を維持したところ、真空はよくなりスパイクも観測されなくなり安定な状態が徐々に得られることがわかった。この基礎データは、今後のCNTワイヤーを用いた静電セプタムの実用化にむけて大きな一歩となる。また特性を評価するために、タングステンとレニウムの合金ワイヤーによる比較も実施した。
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