研究課題/領域番号 |
17K05135
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
杉本 雅樹 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子ビーム科学研究部門, 上席研究員(定常) (90354943)
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研究分担者 |
山本 春也 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 上席研究員(定常) (70354941)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 炭素触媒 / 有機無機転換 / 電子線照射 / 非平衡反応 / 白金代替触媒 |
研究実績の概要 |
平成30年度においては、フェノール樹脂と塩化コバルト(5 wt%)の混合物にアンモニアガス流通下、2 MeV、2~10 mAの条件で電子線を照射して昇温速度を10℃/minに制御しながら試料を800℃まで加熱し、60 min保持することにより、炭素材料を得た(EB試料)。比較試料として、電子線を照射せず、NH3ガス流通下800℃で60 min熱処理した試料も作製した(non-EB試料)。得られた炭素材料について、塩酸により金属コバルト成分を除去した後、粉末X線回折(XRD)測定、X線光電子分光(XPS)測定等の特性評価を行なった。 得られた炭素材料の収率は、EB試料、non-EB試料についてそれぞれ、15%、40%であり、EB試料において低い炭素収率となった。一方、得られた炭素材料は両者ともに非晶質炭素とグラファイトからなる組成であったが、EB試料では炭素収率が低くグラファイト相が多くなった。この原因として、アンモニアガスによる非晶質炭素のガス化反応、Csolid + NH3 → HCN↑ + H2↑、が考えられる。 本研究のプロセスでは、電子線照射によるアンモニアガスの分解生成物(・NH2、・NH)がこの反応を促進したと考えられる。また、XPS測定の結果から、窒素/炭素の相対的な原子比を求めたところ、EB試料、non-EB試料についてそれぞれ、0.021、0.012を得た。窒素1sスペクトルを解析した結果、EB試料、non-EB試料について、全体のピーク面積に対するピリジン型窒素のピーク面積の割合がそれぞれ47%、36%であり、EB試料が触媒活性点を多く含むことが分かった。さらに、過塩素酸を電解質とした回転電極法による酸素還元活性評価において、EB試料はnon-EB試料よりも高活性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
800℃での高温電子線照射を実現するために設計製作した、断熱構造チャンバーとヒーター及び試料ステージが順調に動作し、電子線照射に伴うビーム加熱による温度のふらつきを加味した温度制御のパラメータの最適化が進んだことから、照射実験を順調に実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、透過電顕による微細構造観察を重点的に進め、それらの結果と、組成比変化やXPS 測定による窒素の化学状態の同定結果と合わせて、H30年度までに明らかにした活性が高くなる作製条件が、炭素触媒のどのような構造に影響を及ぼし活性の変化を生じさせるのかについて解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度においては、実験の進捗状況から、電気化学測定システムの購入が不可欠と判断し、昨年度の繰越額と合わせて導入することとしたが、計画よりも安価に購入ができたため繰越が生じた。800℃での電子線照射の繰り返しにより、高温照射装置のヒーター部材の劣化が予想以上に大きかったため、翌年度予算とあわせて購入することとした。
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