研究実績の概要 |
本研究では、身の周りの流体をよく近似する非圧縮流体ならびに、疑似的な(微小な)圧縮性を有する流体を対象とする計算手法の開発を行った。まず、流れそのものが複雑な状態である乱流をとりあげ、空間スキーム・時間スキームが乱流のエクストリームイベント(EE)に与える影響を検証した。スペクトル法を利用し、波数空間で差分法の有効波数を表現することで、差分法が乱流統計の正確さに与える影響を効率的に評価した。同じ時間履歴をもつ外力を低波数のみに与え、スキームの評価をしたところ、低いレイノルズ数では、スキームの違いはほとんど見られなかったが、高いレイノルズ数では、空間スキームの違いは大きく、高次精度スキームほど後半の時刻までEEをよく再現することがわかった(令和元年度 利用報告書「京」一般利用 「3次元非圧縮乱流のエクサスケール並列計算に向けて」)。 計算コストを削減する手法の探求として、ウェーブレットフィルタリングをオイラー方程式に適用しノイズ除去に基づくレギュラリゼーション手法の開発を行った。この手法によって数値計算された場のエネルギースペクトルは、波数の-5/3乗のスペクトルをもつことがわかった(Farge et al., Phys. Rev. E 96, 2017)。 複雑境界を扱うことのできる Volume Penalization 法に関する論文がアクセプトされた。この手法により、複雑形状を有する物体が温度等のスカラー勾配を境界条件として持つ場合のマルチフィジックスな流れをデカルト座標系でとり扱えることが可能となる。詳細については Sakurai et al. [J.Comput. Phys. (2019)] を参照されたい。最終年度においては、このVP法のプログラム実装における不備の修正を行った。詳細はCorrigendumを参照して頂きたい。
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