研究課題/領域番号 |
17K05150
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研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
芹澤 弘秀 沼津工業高等専門学校, 制御情報工学科, 教授 (70226687)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 小林ポテンシャル / 厳密解 / 方形開口 / 電磁波回折 / 異種媒質 / エッジ特性 / 二重無限積分 / 有限要素法 |
研究実績の概要 |
完全導体スクリーン内の方形開口(板厚を考慮)による平面電磁波回折の研究については、小林ポテンシャル法(KP法)による厳密式を用いて様々な開口寸法(0.1波長~5波長)、板厚、および入射角に対して透過電力、開口分布、放射パターンを詳細に調査し、得られた研究成果をまとめて書籍(オープンアクセス)の1章分を執筆した。さらに、構造パラメータの違いによって透過電力量が増減する仕組みを解明する目的で、導波管モードの平面波分解および穴内部での平面波の多重反射に基づく解析法を適用して、大きな電力透過を引き起こす板厚を予測する近似式を導出した。また、いろいろな値の端点情報(エッジ特性)をKP法による厳密式に組み込むことで様々な板厚に対する開口分布と透過電力を計算し、項の打切りに関する解の収束性を調査した(いずれも2020年5月の研究会で発表)。 誘電体や磁性体を考慮したフランジ付き方形導波管の研究については計算コードの更なる改良を行い、有限要素法(FEM)の計算精度を開口電界分布と透過電力に基づいて評価した。特に、メッシュの細分化だけなく解析空間の寸法の影響についても詳しく調査し、計算誤差がその寸法に関して周期的に変動することを明らかにした。 方形導波管アレーの結合問題についてはKP法による厳密な定式化を完了し、等価磁流源を用いた別の方法でも厳密な定式化を行って両者が完全に一致することを確認した。得られた研究成果は査読付学術論文誌に投稿した。方形開口の結合問題(媒質を真空と仮定)については4個のベッセル関数と2個の三角関数を被積分関数に含む二重無限積分の計算コードの開発を行うため、一方向のみ無限区間となる二重積分にベッセル関数の漸近展開を適用して得られた簡単な表示式の計算アルゴリズムと計算コードを開発し、分割した積分領域ごとの精度評価を行った(研究成果については7月の研究会で発表予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
板厚を考慮した方形開口(ただし媒質を真空と仮定)の研究については、様々な構造パラメータに対する物理量の計算を広範囲に行ったため、データの整理に膨大な時間を要し、それに関する書籍(オープンアクセス)の1章分の執筆にも多大な時間を要してしまった。その一方で、解の収束性の評価および透過電力量が増減する仕組みの解明では新しい知見を得ることができ、研究が大きく進展した。ただし、当初予定していた斜め入射についての検討は実施できなかった。誘電体と磁性体を考慮したフランジ付き方形導波管の問題については、計算コードの更なる確認・改良は予定通り実施できたが、汎用数値解法の一つである有限要素法の精度評価にかなりの時間を要してしまい(その結果、厳密解との大きなずれの原因を特定することはできたが)、KP法の解の収束性についての調査までは実施できなかった。開口の結合問題で現れる二重無限積分の計算コード開発に必要となる単純な積分の計算法では考慮しなければならないことが多く、当初の見込みよりも多くの時間を要してしまった。方形導波管アレーの結合問題の厳密解の導出は年度途中で予定通り完了させることができたが、計算結果の妥当性を確認するための他の方法(等価磁流源による方法)による定式化にかなりの時間を要してしまったことも研究全体が遅れた理由となっている。
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今後の研究の推進方策 |
板厚を考慮した方形開口(ただし媒質を真空と仮定)の研究については、端点情報(エッジ特性)と解の収束性の関係を様々な板厚に対して調査し、異なった開口寸法でその傾向に違いがみられるのかを明らかにする。誘電体と磁性体を考慮した薄い開口(板厚を無視)とフランジ付き方形導波管の問題に関しては、電力流の再確認と解の収束性の再調査を行い、昨年度実施できなかったMeixnerの理論の解釈についての再検討を行う。汎用数値解法の一つである有限要素法の精度評価についてはメッシュの細分化と解析空間の寸法の影響についてさらに詳しく調査し、特に偏波との関係について明らかにする。開口の結合問題については二重無限積分の計算アルゴリズム開発をさらに進め、行列要素の計算コードを完成させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度内に国際会議での発表を計画していたが、データ収集の遅れと結果に対する再確認の必要性から年度内の発表に間に合わず、次年度の国際会議に投稿することとなった。その結果、出張費の支払いが次年度に繰り越されることとなった。ただ、次年度の国際会議については既にアクセプトの通知が届いているが、新型コロナウィルスの感染拡大により、その会議も1年の延期となってしまったため、今後は研究費の延長申請も視野に入れた対策が必要と考えている。
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