研究課題/領域番号 |
17K05158
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
森田 純 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20166416)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カッツ・ムーディ群 / 単純群 / 乗法因子群 / 局所アフィン・ルート系 / 局所アフィン・リー代数 / 準周期構造 / 非周期構造 / 量子ビット |
研究実績の概要 |
カッツ・ムーディ群の中で、単純群であって、しかも自明なシュアー乗法因子群を持つものを構成する方法を提案した。特に階数2の一般カルタン行列から得られるための簡明な条件を導いた。これにより夥しい数の例が統一的に得られることとなった。自明なシュアー乗法因子群を持つ無限単純群が大量に得られ、それらを比較的容易な形で統一的に議論できる様になったことは、群論的には非常に興味深い。 さらに無限次元の A 型局所アフィン・ルート系に関して、その自己同型群を決定した。これは有限次元では良く知られている基本的な事実であるが、一般の無限次元となると様相が異なり、厳密な考察を加える必要がある。無限置換群などに関しても議論する必要があり、それらを丁寧に調べることにより、最終的に自己同型を分類し、自己同型群を決定した。 次に、局所アフィン・リー代数に関する同型問題の最終解決に向けて研究を押し進めた。そのために局所アフィン・ルート系の自己同型について深い洞察を加える必要があり、これらの議論を通じて問題の決着に向けた大きな進展を見た。本研究課題のメインとなっている問題が、研究計画の最終年度までに解決される見込みがついたことは大きな成果である。 上記に述べた、これらリー理論の応用として、準周期・非周期構造への応用を研究した。そのためには、結晶構造・結晶ルート系だけではなく、H 型などに見られる非結晶ルート系の構造分析も必要となる。ここでは、四元数体における H4 型ルート系 R を取り上げ、さらにその対となるべき、もう一つの H4 型ルート系 R' も同時に考え、それらの合併 R U R' の生成する鏡映群と無限ルート系を構成し、それらの代数的準周期構造や幾何的非周期構造などを研究した。それにより、量子ビットに関する離散近似についての方法論を開拓し、一つの大きな可能性を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
カッツ・ムーディ群の単純性と乗法因子群に関して、取り扱い易い形での研究成果が得られた。これは研究計画よりも早い進捗状況である。局所アフィン・リー代数の同型問題に関して、局所アフィン・ルート系の自己同型を決定するという側面から攻めて、その結果として問題解決への道筋が明快に得られた。これにより研究計画の中心的な課題が解決する見込みがついたので、これは計画以上に進展している。準周期構造と非周期構造への応用を進展させるためには非結晶型ルート系の考察は不可欠であるが、四元数体における双子の H4 型ルート系に考察を加える過程で量子ビットとの関連が見いだされ、これは予期以上の発見であった。これは計画を遥かに超えた成果と言える。 以上を総合すると、研究計画は3年間となっているが、幸いにも1年が過ぎた段階で、2年目の後半くらいまで進んでいるペースであると認められる。今後とも様々な困難を乗り越えながら研究を進めていけば、研究計画の目的は期間内に達成されるものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
1年目が過ぎた段階で研究計画よりも早い進捗状況であるので、これまでの研究成果を身長に振り返りつつ、研究を更に推し進めていく。 カッツ・ムーディ群に関しては、単純性とシュアー乗法因子群の構造、およびそれらの相互関係を解明しながら、さらに同型問題へのアプローチへと向かいたい。こうすることにより、研究目的が十分に達せられるものと見込まれる。局所アフィン・ルート系の自己同型群の構造を用いて極小な局所アフィン・リー代数の同型問題に最終的な決着をつける。これは今まで手が付けられていなかった大問題なので、これが解決されれば理論上の大きな成果となる。これを2年目である今年度中に達成させたい。さらに、双子の H4 型ルート系と量子ビットの関係を一層解明して、結晶構造・非結晶構造・周期構造・準周期構造・非周期構造などの新たな理論体系の構築へと研究を進めていく。新しい視点により今まで知られていなかった未知の領域を開拓していく予定である。 今までの研究を総合する中で、アフィン型カッツ・ムーディ群におけるガロア・デサント理論が美しい形で成立していることが想定されるので、本研究課題の応用として解決していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
招聘予定者の都合により日程が次年度に変更になっため、繰り越す必要が生じた。
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