研究実績の概要 |
昨年度までに得られていた成果に関して,共同研究の分も含め,3本の論文を作成した。それらのうちの2本は,掲載確定しまた既に掲載された。 さらに,ディリクレ級数たちの代数的独立性やもっと強い関数的独立性に関する新たな結果をいくつか得た。それらのうちで2つの結果を以下に述べる。 1つ目は,リーマンのゼータ関数 ζ(s) の代数的差分微分独立性に関するものである。ゼータ関数 ζ(s) は有理関数体上で代数的微分独立性を満たす(すなわち,どんな代数的微分方程式も満たさない)ということを,1900年にHilbertが示した。その一般化として,代数的差分微分方程式を考えたときの研究が行われてきた。ここでの差分とは,ζ(s + s_1),...,ζ(s + s_r)(導関数たちに対しても同様)という形を扱うことを意味する。例えば,1920年にOstrowskiが,相異なる任意の実数たち s_1,...,s_r の場合に独立性を得た。1986年にShapiroとSparerが,ある行列式を計算することによって,実部たちが相異なる任意の複素数たち s_1,...,s_r の場合に独立性を得た。それらの結果を拡張し,相異なる任意の複素数たち s_1,...,s_rという最も緩い条件で独立性を示した。 2つ目は,一様分布する数列に対する適当なディリクレ級数たちの関数的微分独立性に関するものであり,値分布の観点から証明した。具体例として次が挙げられる。SL(2,Z)の正則 Hecke 固有尖点形式 f に対して,Sato-Tate予想が証明されているが,f に付随する対称積 L-関数たちとそれらの導関数たちに対してある関数的独立性を得た。
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