研究課題/領域番号 |
17K05161
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
澤邉 正人 千葉大学, 教育学部, 教授 (60346624)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 半順序集合 / 表現 |
研究実績の概要 |
G を有限群とし e を単位元とする. G の部分群全体 Sgp(G) を包含関係と共にポセットと見なし, また付随するクイバーと見なす. 本研究の実績はクイバー Sgp(G) の表現を考察し, その理論の基礎を構築したことである. モデルケースは部分群 H<G に対して指標環 Z[Irr(H)] を対応させ, 包含関係 H>K(矢 H→K) に対して Z[Irr(H)] から Z[Irr(K)] への制限写像を対応させる Sgp(G) の表現である. このモデルケースには次の二つの特殊事情が付随している. 1) 逆矢 H←K に対して誘導写像を対応させることが出来る. 2) 各指標環 Z[Irr(H)] 上に内積が定義され, 制限・誘導・内積に関する相互関係としてフロベニウスの相互律が成立する.この特殊事情を含むモデルケースを次のように一般化した. 『F を可換環 R 上のクイバー Q の表現とする. 各頂点 a に対して双線形形式 ( , )_{a}:F_{a}×F_{a}→R が定義されていると仮定する. このとき Q に全ての逆矢を付け加えたクイバー Q^{ud} の表現 F^{ud} が, この形式と共にフロベニウスの相互律の関係式を満たすとき, F^{ud} を F から導かれる「群論的クイバーの表現」と呼ぶことにする. 』以上を踏まえて, 本研究の実績は「群論的クイバーの表現」の基礎を構築したことである. 特筆すべき我々のアイデアの一つは, 自然数 n と部分群 H のペアに対して H 上の方程式 X^{n}=e の解集合 L_{n}(H) に着目し, L_{n}(H) の H-類関数全体からなる C-代数 cf(L_{n}(H)) を考察の中心に置いたことである. 本研究の結果は, 現在数学専門誌に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有限群の通常指標理論の鍵となる部分は, 指標環の間の①制限写像・②誘導写像、指標環上に定義された③内積、及びこれらを統括する④フロベニウスの相互律である. これら4本柱を基点に, 本研究の中で, 拡張されたポセット(クイバー)Sgp(G)×N の表現論の基礎が築かれたことの意義は大きい. 見方を変えれば, 今回の実績は, この4本柱の本質をあぶり出したことである. さらに, これはブラウアー指標環を大きく含む概念になっており, その応用範囲は格段に広がっている. この理論を用いた今後の研究の中で, 群構造の解明に向けて, 具体的な応用が期待できる. 以上の理由から, 本研究は概ね順調に進展していると判断するものである.
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度の研究成果を踏まえて, 構築した理論の具体的な応用を試みることは勿論のこと, 一方で更なる理論展開の可能性も存在する. 我々の先行研究では, 自然数 n と有限群 G に対して G 上の方程式 X^{n}=e の解集合 L_{n}(G) が重要な役割を果たしてきた. これを部分群を用いて解釈すると, 巡回部分群 H<G の集まりで, その位数が n を割り切るもの, となる. 巡回部分群 H の位数 |H| は H の指数 exp(H)(H に含まれる要素の位数の最小公倍数)と等しい. そこで, 指数が n を割り切るような部分群の族に着目するのである. この部分群族 D に関するホモトピーの性質, D をクイバーと見なしたときの表現を調べることにより, 本研究をさらに推進させていく.
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