研究課題/領域番号 |
17K05162
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
志甫 淳 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (30292204)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 対数的代数多様体 / ドラーム基本群 / 対数的クリスタリンコホモロジー / 対数的ドラームヴィットコホモロジー |
研究実績の概要 |
(1) 昨年度までに,適切な条件を満たす標数0の対数的代数多様体の切断付きの射に対してその相対的副冪単ドラーム基本群の様々な定義が一致することを純代数的に証明し,応用として,安定対数的曲線の副冪単ドラーム基本群へのモノドロミー作用を純代数的に記述し,Andreatta-Iovita-Kimが示した双曲的曲線のp進良還元判定条件の証明における超越的部分に純代数的証明を与えた論文を執筆し,投稿していた.今年度は,それを改稿した結果,受理されるに至った.これはB. Chiarellotto氏, V. Di Proietto氏との共同研究である.
(2) 標数p>0の完全体k上の代数多様体Xに対して,滑らかかつ良いコンパクト化が可能な場合は対数的クリスタリンコホモロジーと一致し,有理的にリジッドコホモロジーと一致し,かつ有限生成W(k)加群となるような良い整p進コホモロジー理論が存在するかという問題について引き続き考えた.昨年度までに,Xの固有かつ生成的にエタールな良い超被覆の対数的クリスタリンコホモロジーを考えた場合は,1次コホモロジーについてはこれが超被覆のとり方によらないが,2次以上のコホモロジーについては超被覆のとり方に依存しうることを証明していた.今年度は,まず,特異点解消についての強い予想を仮定すると,上記のような良い整p進コホモロジー理論が存在することをrh位相を用いて証明した.特に,このコホモロジー理論はrh降下の性質を持つ.また,昨年度の証明をよくみると,エタール降下の性質を持つ良い整p進コホモロジー理論が存在しないことも容易にわかる.以上の結果について論文を執筆中である.これはV. Ertl氏,J. Sprang氏との共同研究である.
また,これまでに得られたいくつかの結果に対する論文の執筆,改訂を引き続き行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相対的副冪単ドラーム基本群に関する結果は,論文の執筆,改訂に時間がかかったが,期待通りの成果である.他の淡中基本群への理論の拡張も期待できる.また,対数的代数多様体の基本群へのモノドロミー作用の代数的計算などに応用できると思われる.良い整p進コホモロジー理論についての研究も期待通りに進んだ.これまでに得られた結果についての論文の執筆,改訂がやや遅れているが,大きな問題はない.
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今後の研究の推進方策 |
整p進コホモロジーについての論文を完成させる.また,過収束アイソクリスタルの圏の淡中基本群の研究,非正則接続のde Rhamコホモロジーとリジッドコホモロジーの研究,de Jong予想に関連した研究も進める.これまでに得られた結果について,論文の執筆,改訂を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコロナ禍により,国内外への出張が不可能であった.また,コロナ禍に伴って大学内の業務が極めて重くなり,研究活動が大きく制限された.次年度は,まず,図書やコンピュータ関連機器の充実のために予算を使用し,コロナ禍における研究環境づくりを進める.研究集会等の開催のためにも使用予定であるが,状況はいまだに見通せないので,臨機応変な対応が必要であると思われる.
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