研究課題/領域番号 |
17K05163
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 正俊 東京工業大学, 理学院, 准教授 (30534052)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 整数論 / ゼータ関数 / 明示公式 / 正定値 / screw関数 |
研究実績の概要 |
昨年度までに行った正準系のスペクトル逆問題についての研究から、screw関数の理論とゼータ関数の関連が発見された。Screw関数は、古典的な解析学において重要な対象であり、ヒルベルト空間上の正定値な積分作用素の積分核の理論と深く関係している。研究代表者は本年度、Riemannゼータ関数からある特殊なscrew関数を定義し、その解析的性質や、Riemann予想に代表されるRiemannゼータ関数の零点分布との関係を幾つも明らかにした。これらの成果の一つとして、1952年にA. Weilが提唱した分布を用いたRiemann予想の規準が、通常の積分作用素の積分核の正定値性によって述べられることを示した。一方、1990年に吉田敬之氏は、Weilの分布を用いて定義されるあるエルミート形式が、ある関数空間上で非退化であることとRiemann予想が同値であることを発見した。研究代表者は、screw関数を用いて、実数上の二乗可積分関数の成すヒルベルト空間とその上の積分作用素を用いて定式化できる類似の結果を示した。これらをはじめとする幾つかの結果を、国内外の研究集会で発表し、何篇かの論文にまとめてプレプリントサーバで公開した。
また、昨年度までに行っていた正準系のスペクトル逆問題に関する研究について、系の解が整関数とは限らない場合、系のハミルトニアンが非負値とは限らない場合、または系の解から本研究課題の手法で構成される作用素の核が関数ではなく分布である場合に、これまで得られていた結果の証明の修正や改良、議論の整理、定式化の再検討などを行った。これらの一部は専門誌で発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記したような進展は、ゼータ関数から派生する関数空間の諸性質の研究について、申請時点では予想されていなかった新たな方向性と視座を与えるものである。このような発見に至るための土壌として成果を積み重ねることが本課題が目指すところの一つであった。新型コロナウィルス(COVID-19)流行の影響により課題の延長を行ったが、前述のような目標の一つが達成されたことは、本研究課題が順調に進展していることを示しているものと考えられる。とはいえ、いまだ残っていたコロナウィルス流行の影響として、本年度も国内外の出張が大きく制限されたことにより、研究を更に進展させるために他の研究者たちと意見を交わす機会は十分には得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で述べた通り、本年度までの研究によって、本課題の目標はかなりの所まで達成された。最終年度である次年度は、まず正準系のスペクトル逆問題に関する研究について、これまで得られた成果の洗練や修正を行い、研究を完成させることを目指す。さらに、本年度に発見されたRiemannゼータ関数の理論とscrew関数の関係について、これをより発展させると共に、より一般のゼータ関数へ理論の枠組みを拡張するための研究を行う。また、こういった研究で得られた成果を論文にまとめ、プレプリントサーバー及び専門誌で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス(COVID-19)の世界的流行の影響により,予定していた出張や研究者の招聘が中止または延期となったことで次年度使用額が生じた.その分は,延期となった出張や招聘の日程の再調整や,新たな出張や招聘の企画により使用する予定である.
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備考 |
研究代表者の研究成果等に関するwebページ
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