研究実績の概要 |
保型形式の一つの構成法としてポアンカレ級数がある。これは、正則楕円保型形式の場合には、保型形式の空間からフーリエ係数を取り出す写像をPetterson内積を通じて与える保型形式である。高次元の保型形式の場合, 正則Siegel保型形式の場合は,Y.Kitaokaらによって考察されていた(1980年代)。これの実解析的類似を考えるとフーリエ係数の代わりにBessel模型(=一般化Whittaker模型) を用いることが妥当であろう。すなわち、Bessel函数の離散群による平均化により定義される級数としてポアンカレ級数を考えることができる。特にBessel函数が大きい離散系列表現を生成する場合が興味深い。 さて、ポアンカレ級数についての最初に問題となるのは、その収束性であるが、Bessel 函数の明示的な公式があると都合がよい。Bessel函数の公式が研究代表者によって部分的 には得られていた。この公式を完成させることが目標となる。そのための足掛かりとて、今年度は1次元のKタイプを持つ一般化主系列表現を生成するBessel函数(これは実質的に2変数の関数である)の明示的な公式を得ることができた。これは2重逆メラン変換としての表示になっているので、関数の挙動を調べやすいのが利点である。この公式を得る過程で、上述の従前の結果を参考にしつつBessel函数を「半分」逆メラン変換したものが超幾何方程式を満たすという観察が鍵となった。 さらにこれらの公式を大きな離散系列の場合に拡張することを試みた結果、極小Kタイプの次元に関する帰納的な公式を得ることができた。
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