研究課題/領域番号 |
17K05175
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
水野 義紀 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (30546388)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ディリクレ級数 / 合同 / 類数 / ピーターソン・ノルム / カトック・サルナック対応 |
研究実績の概要 |
1.前年度の継続研究として、ガウス数体上の半整数2次エルミート行列の跡から構成されるディリクレ級数を全複素平面に解析接続することが出来た。対称行列の場合、2次元上半平面の調和解析を用いる先行結果があった:(i)余コンパクトな離散群(Duke-Imamoglu、江上)(ii)SL(2,Z)(Diehl(条件付き)、江上・佐藤(詳細は未発表))。本研究では3次元上半空間とSL(2,O)に関するスペクトル理論、カスプ形式の上限ノルム評価、測地曲面での基本領域の面積評価、カトック・サルナック型対応、概均質ゼータの明示公式などを活用した。(Roland Matthesとの共同研究) 2.金子昌信との共著論文Genus character L-functions of quadratic orders and class numbersがJournal of the London Mathematical Societyに出版された。ザギエ和と実及び虚二次体の類数に関する合同式を扱った論文Congruences relating class numbers of quadratic orders and Zagier's sumsがJournal of Number Theoryに受理された。論文改訂作業に伴い、複数の注意および具体例を追加した。 3. コーネン・ザギエ公式をアイゼンシュタイン級数の場合に定式化した論文Petersson norms of Eisenstein series and Kohnen-Zagier's formulaがJournal de Theorie des Nombres de Bordeauxに受理、出版された。グロス・コーネン・ザギエ公式をアイゼンシュタイン級数の場合に定式化したプレプリントを学術誌に投稿した。(後者は林田秀一との共同研究)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
論文が順調に掲載・受理・作成できており、研究推進のための細かな成果・多くの情報は着実に集まりつつあるが、残念ながらすべてが計画通りという訳ではない。一方、研究実績2の後半で述べたことは、本年度予定課題のひとつに関わる成果であり、受理まで漕ぎつけたことは喜ばしい。研究実績1は、カトック・サルナック対応および概均質ゼータの明示式といった、これまでの成果が活用できている。これらは研究の順調な側面である。
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今後の研究の推進方策 |
未完成の部分の研究推進には、Baruch-Maoの論文A generalized Kohnen-Zagier formula for Maass formsが参考になると考えており、ヒントを模索していく。高次元ポアンカレ級数の周期積分の理解や関連するモジュラー形式のフーリエ係数の決定など、時間の都合で保留している方向も、集約作業と併せて引き続き検討を進める。行列の跡から構成されるディリクレ級数(三井のディリクレ級数)は行列の加法理論や円錐中の格子点数え上げ問題を背景にもつ。その留数の情報も含め、本年度得られた解析接続が、何らかの応用をもつか否かも検討の対象としたい。これまでの成果を時間の許す限り集約し、論文にまとめながら再計算・再確認を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスのため出張が取りやめとなり旅費にかなりの残額が生じた。出張の可能性がいまのところ不透明であるため、次年度使用額のうちある程度は、情報収集に必要な図書費、論文作成に必要となる印刷機器整備費、パソコン関係の物品費に充てる予定である。
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