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2018 年度 実施状況報告書

擬尖点形式による跡公式の単純化と保型形式及びゼータ関数の研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K05178
研究機関九州大学

研究代表者

権 寧魯  九州大学, 数理学研究院, 准教授 (30302508)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード跡公式の単純化 / 素測地線定理 / ヒルベルトモジュラー群 / セルバーグ型ゼータ関数 / 高階導関数の非零領域
研究実績の概要

高階数、特に階数2の非コンパクト局所対称空間に作用するラプラシアンのスペクトルを跡公式の単純化を用いて調べ、数論的応用を研究するのが目的である。具体的には、階数2の群の非ココンパクトな離散部分群に対する素測地線定理の精密化やラプラシアンのスペクトル、固有空間の次元の評価を研究するために、対応するセルバーグ型ゼータ関数とその高階の導関数の非零領域を詳細に調べることが必要となる。
階数1の典型例であるリーマン面に対するセルバーグゼータ関数については、Luo, Minamide, Jorgenson らによってセルバーグゼータ関数の導関数の非零領域についていくつかの結果が得られている。また、モジュラー群などに対する非コンパクトリーマン面に対しては、技術的理由によりセルバーグゼータ関数自身ではなくて、“修正された”セルバーグゼータ関数の導関数について研究されてきたことに注意する。
今回、階数2の群の非ココンパクトな離散部分群の典型である実二次体のヒルベルトモジュラー群に対して、そのセルバーグ型ゼータ関数それ自身とその導関数についてその非零領域について研究を行い、零点の個数についてのある種の評価を得た。方法はこれまでに得ていたヒルベルトモジュラー曲面に対する“二重差分”跡公式を用いる。跡公式の右辺に現れる放物元や2型双曲元の寄与がより精密に評価できた事がポイントである。得られた零点の個数評価の誤差項を改善するには、セルバーグ型ゼータ関数の虚軸方向への漸近評価が必要となるが、これと他の階数2の群への拡張は次年度に考察したい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

特別な場合であるが、階数2の群に対する非コンパクトな場合のラプラシアンのスペクトルや固有空間の次元の評価に必要なセルバーグ型ゼータ関数の導関数の非零領域についての評価が得られたので、他の階数2の場合への拡張が期待できるため。

今後の研究の推進方策

階数2の群Sp(2,R)またはSU(2,2)の場合に、「擬尖点形式」の具体的な構成を研究する。ともにコンパクトなカルタン部分群を持ち、それぞれ、共役でないカルタン部分群を4個、3個持つ。Sp(2,R)のカルタン部分群の階数は、0,1,1,2であり、SU(2,2)は0,1,2である。これらの群上の「擬尖点形式」を熱核を用いて構成し、ユニポテント重み付き軌道積分のフーリエ変換を明示的に計算することを目標とする。得られた跡公式の単純化(1型)を用いて一変数セルバーグ型ゼータ関数を定義し、解析的性質や数論的応用を考察する。また、Sp(2,R)には階数1の共役でないカルタン部分群が二つありこれらのカルタン部分群上軌道積分が消えないことから、セルバーグ型ゼータ関数を構成する際に、これらの共役類を分離できるか検討する。SU(2,2)にはこの問題は発生しないことに注意する。

次年度使用額が生じた理由

ドイツ人研究者との研究討論・打ち合わせの日程について双方の都合が合わず、旅費の未使用額が生じた。次年度に改めてドイツ人研究者を訪問し、研究討論・打ち合わせを行うための旅費に使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] セルバーグゼータ関数と素測地線定理の現在2019

    • 著者名/発表者名
      権 寧魯
    • 雑誌名

      第63回代数学シンポジウム報告集

      巻: 63 ページ: 72--91

    • オープンアクセス
  • [学会発表] セルバーグゼータ関数と素測地線定理の現在2018

    • 著者名/発表者名
      権 寧魯
    • 学会等名
      第63回代数学シンポジウム
    • 招待講演

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公開日: 2019-12-27  

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