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2018 年度 実施状況報告書

跡公式とゼータ関数を用いた素測地線とスペクトルの分布に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K05181
研究機関琉球大学

研究代表者

橋本 康史  琉球大学, 理学部, 准教授 (30452733)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードセルバーグ跡公式 / セルバーグゼータ関数 / ラプラシアンのスペクトル / 素測地線定理
研究実績の概要

体積有限な双曲多様体上のラプラシアンのスペクトルは、セルバーグゼータ関数の非自明零点としてあらわれることから、リーマンゼータ関数の非自明零点と比較されることが多い。リーマンゼータ関数の非自明零点については、その重複度が1であると予想されており、Montgomery の pair correlation (1972) による手法を用いた評価をはじめ、少なからぬ研究成果が得られている。一方で、体積有限なリーマン面上のラプラシアンのスペクトルについて、Peter によるpair correlation の類似の研究(1995)があるが、重複度の評価という観点からは、リーマンゼータ関数の非自明零点と比較して、それほど強い結果が得られているとは言い難い。
平成30年度の研究では、素数定理と素測地線定理の誤差項評価の相違に着目し、素測地線定理の誤差項評価におけるある種の強い仮定のもとで、pair correlation の手法をセルバーグゼータ関数に適用することで、ラプラシアンのスペクトルの重複度に関する評価を行った。その結果、素測地線定理の誤差項の最良に近い評価を仮定することで、ラプラシアンのスペクトルの重複度に関する非自明な評価が得られることがわかった。テスト関数のとり方を工夫することで、より良い評価が得られることが期待できるため、今後も研究を継続する。
本研究成果については、国内の研究集会で報告済みであり、改良・修正の過程を経て、近い将来、国際学術誌に投稿する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究計画では、平成30年度は、length spectrum やセルバーグゼータ関数、スペクトルゼータ関数に関するそれまでの研究成果を2次元の多様体だけでなく、3次元に拡張することを目標にしていた。現在のところ、3次元多様体に関する研究成果が十分に得られているとは言えない状況である。一方で、今年度の研究成果である体積有限な2次元双曲多様体におけるラプラシアンのスペクトルの重複度の評価は、素測地線定理の誤差項評価に関するある種の強い仮定のもとでの結果だが、既存の非自明な結果がこれまでにほとんど得られていなかったため、当初の想定を上回る成果であると考える。とくに、比較的汎用性のある pair correlation の手法を用いているため、高次元の多様体上のラプラシアンのスペクトルだけでなく、多種多様なゼータ関数の非自明零点への拡張も期待できる、という観点からも、重要な成果であると考える。
以上の理由から、当初の想定どおりに進まなかった研究もある一方で、想定していなかった成果も得られたことを、総合的に勘案して、「おおむね順調に進展している」と自己評価する。

今後の研究の推進方策

平成30年度の研究では、体積有限なリーマン面上のラプラシアンのスペクトルの重複度を、素測地線定理の誤差項評価に関するある種の強い仮定のもとで評価できた。これは一般的なリーマン面に関する成果だが、モジュラー群や合同部分群などを基本群としてもつリーマン面に関してはより精密な素測地線定理の誤差項評価が得られていることを考えると、これらのリーマン面に対して、比較的弱い仮定でより良い評価が得られることが期待できる。今後は、このような個別のリーマン面に関する重複度評価を改良するとともに、その成果をより一般的なリーマン面および高次元の多様体に拡張する。加えて、length spectrum やセルバーグゼータ関数などの素測地線分布に関する対象についても同時に研究を進め、スペクトル分布との間の関連性を利用して、スペクトルゼータ関数の解析性や具体的な値についても調べる。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Asymptotic behaviors of class number sums associated with Pell-type equations2019

    • 著者名/発表者名
      Y. Hashimoto
    • 雑誌名

      Mathematische Zeitschrift

      巻: 292 ページ: 641,654

    • DOI

      10.1007/s00209-018-2139-5

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Key recovery attack on Circulant UOV/Rainbow2019

    • 著者名/発表者名
      Y. Hashimoto
    • 雑誌名

      JSIAM Letters

      巻: 11 ページ: 45,48

    • DOI

      10.14495/jsiaml.11.45

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Chosen Message Attack on Multivariate Signature ELSA at Asiacrypt 20172019

    • 著者名/発表者名
      Y. Hashimoto, Y. Ikematsu, T. Takagi
    • 雑誌名

      IPSJ Journal

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] High-rank attack on HMFEv2018

    • 著者名/発表者名
      Y. Hashimoto
    • 雑誌名

      JSIAM Letters

      巻: 10 ページ: 21,24

    • DOI

      https://doi.org/10.14495/jsiaml.10.21

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Chosen Message Attack on Multivariate Signature ELSA at Asiacrypt 20172018

    • 著者名/発表者名
      Y. Hashimoto, Y. Ikematsu, T. Takagi
    • 雑誌名

      Springer LNCS

      巻: 11049 ページ: 3,18

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/978-3-319-97916-8_1

    • 査読あり
  • [雑誌論文] On the security of Zhang-Tan's variants of multivariate signature schemes2018

    • 著者名/発表者名
      Y. Hashimoto
    • 雑誌名

      Ryukyu Mathematical Journal

      巻: 31 ページ: 1,5

    • オープンアクセス
  • [学会発表] On multiplicities of eigenvalues of Laplacians on hyperbolic surfaces2018

    • 著者名/発表者名
      Y. Hashimoto
    • 学会等名
      Zeta Functions in OKINAWA 2018
  • [学会発表] Chosen Message Attack on Multivariate Signature ELSA at Asiacrypt 20172018

    • 著者名/発表者名
      Y. Hashimoto, Y. Ikematsu, T. Takagi
    • 学会等名
      The 13th International Workshop on Security (IWSEC 2018)
    • 国際学会
  • [学会発表] Circulant UOV/Rainbow の安全性について2018

    • 著者名/発表者名
      橋本康史
    • 学会等名
      2018年度日本応用数理学会年会
  • [学会発表] A survey on Multivariate Public key Cryptosystem2018

    • 著者名/発表者名
      橋本康史
    • 学会等名
      代数的手法による数理暗号解析

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公開日: 2019-12-27  

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