研究実績の概要 |
2020年度は, 昨年度に引き続きこれまでに行ったルート系やリー群に付随する多重ゼータ値や関数に関する膨大な研究成果について本として出版する計画が進行しており, それに沿って原稿を書き進めた. (松本耕二氏 (名古屋大), 津村博文氏 (都立大) との共同研究) また, 当初の計画にはなかったことであるが, 有限多重ゼータ値と対称多重ゼータ値において現在最も重要な研究目標とされている金子-Zagier 予想に関して進展が得られた. これは多重ゼータ値を定義する級数を有限で打ち切って有限体上の数列とみなす有限多重ゼータ値と通常の多重ゼータ値のある種の対称化である対称多重ゼータ値の間には一対一対応があるという予想である. この予想を確かめる為, 元々の多重ゼータ値の間で成り立つ関係式を基に様々な関係式が構成され, 両者の間で同じ形の関係式が成り立つことが確かめられてきた. しかし, 片方でしか確認できていない関係式もいくつか存在しており, 予想確認のために示す努力がなされてきた. このような関係式の一つである青木・大野関係式について, これまで示されていなかった対称多重ゼータ値版を, 多重ゼータスター値の合同式を示すことによって得ることに成功した. この関係式を用いれば, これまで知られていた他の2種類の関係式にも新しい証明が与えられる. この結果により, 金子・Zagier 予想はさらに支持されるものとなり, また手法としても有限対称多重ポリログとも呼べる対象を導入したことにより, 新たな研究の方向性を示したと考えられる. (藤田賢斗氏(立教大)との共同研究)
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