研究実績の概要 |
本研究では,Faddeev-Reshetikhin-Takhtajan構成法から生じる2種類の代数(双亜代数および面代数)に対し,少し広い意味での森田同値性を明らかにすることを目的としている.昨年度と同様,当該年度も新型コロナウイルス感染症対応のため研究打ち合わせを行うことが困難な状況が続き,加えて,他の業務量が増大したりしたため,残念ながら,交付申請書に記載した研究実施計画に沿った研究を十分に行えなかった.このため,本年度は,昨年度実施した研究による結果を共著論文としてまとめた.この結果は,ダイナミカル・ヤン・バクスター写像に付随して定まる反射方程式の解であるダイナミカル・リフレクション写像の構成に関するもので,ヤン・バクスター写像に付随して定まる反射方程式の解の構成方法(K. de Commer, Proc. Edinburgh Math. Soc. 62 (2019), 1089-1113)を,圏論を用いて一般化したものである.論文は,現在投稿中である. また,ダイナミカル・ヤン・バクスター写像から定義される圏に関する研究も行った.ヤン・バクスター写像の場合,特別な性質(non-degenerateかつinvolutive)をもつヤン・バクスター写像から定まる構造群(structure group)はGarside群になるという著しい性質がある(F. Chouraqui, Comm. Algebra, 38 (2010), 4441-4460).本研究は,これのダイナミカル・ヤン・バクスター写像への一般化を試みるものである.ダイナミカル・ヤン・バクスター写像から構造群を直接定義することは難しいが,構造群に対応するような圏を間接的に定義し,その性質を調べている.現在も研究を続行している.
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