研究実績の概要 |
この研究では、次元が d の局所(または次数付き)マコーレー環 R において長さ d の自由分解を持つイデアル I が与えられたとき、適当なパラメータ系で生成されるイデアル Q を用いて I の自由分解を変形することにより、イデアル商 I : Q の自由分解となる非輪状複体を構成する方法(これを「*変形」という)に注目する。その変形を繰り返すことにより、イデアル I の冪乗のサチュレイションやシンボリック冪の研究に応用することが目的である。*変形の結果として得られる非輪状複体の末尾の準同型写像を制御することが重要になるのだが、その為には、末尾の 2 つのR-自由加群の基底を適切に表現する必要がある。昨年度は d = 3 で R が局所環の場合にこの問題に取り組み、変形操作の繰り返しに耐えうるのではないかと思われる基底の記述法を見出すことができたので、今年度は次数付版の*変形の理論を構築することを目標とした。 主結果は、3次元次数付マコーレー環 R において次数付自由分解をもつ斉次イデアル I が与えられたとき、適当な斉次パラメーターイデアル Q を用いて I の次数付自由分解を変形することにより、イデアル商 I : Q (これも斉次イデアルになる)の次数付自由分解となる非輪状複体を構成するというものである。昨年度の研究では、末尾の2つのR-自由加群の基底を3変数 A, B, C の単項式と数字 1, 2, 3 の組み合わせで記述する方法を見出すことができたのであるが、これらの変数と数字に適切な重みを与えることが鍵になった。また、末尾のR-自由加群の基底の次数から、シンボリック冪の生成元の次数を容易に計算することが可能なものになっている。
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