研究課題/領域番号 |
17K05192
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
西田 康二 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (60228187)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 可換環 / イデアル商 / 非輪状複体 |
研究実績の概要 |
この研究では、次元が d の局所(または次数付き)マコーレー環 R において長さ d の自由分解を持つイデアル I が与えられたとき、適当なパラメータ系で生成されるイデアル Q を用いて I の自由分解を変形することにより、イデアル商 I : Q の自由分解となる非輪状複体を構成する方法(これを「*変形」という)に注目する。その変形を繰り返すことにより、イデアル I の冪乗のサチュレイションやシンボリック冪の研究に応用することが目的である。 これまでのシンボリック冪の研究では、具体例を考察する際には、主にスペース・モノミアル・カーブを定義する素イデアルを扱い、シンボリックリース環のネータ性を調べる為の Huneke の判定法や非輪状複体の変形を用いたシンボリック冪の計算などが実際に適用できることを確かめてきた。スペース・モノミアル・カーブの解析と書くと、非常に特殊なものを扱っているように感じられるが、それは射影平面内の有限な点集合のブローアップと密接に関係している。複数個の素イデアルの共通部分が持つ複雑な性質が、一つの素イデアルの性質に帰着できれば、大きな進展が得られるに違いない、という考え方が背後にあり、多くの研究者がその方向から問題に取り組んでいる。 しかし、今年度は観点を全く変え、有限な点集合の定義イデアル自体を直接考察してみた。点の数が少ない場合や、射影平面内の2次曲線(既約でなくても良い)上に点集合が乗っている場合などにシンボリック冪を調べてみると、非常に興味深い元が見つかり、Huneke の判定法も適用できることが分かった。残念ながら、非輪状複体の変形を用いてシンボリック冪を計算する、という段階にはまだ到達できていない。今後の課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
射影平面内の有限な点集合のブローアップは、Hilbert の14問題に対する永田の反例を構成する際に鍵となる重要な研究テーマであり、未解決問題も残されている。この問題に環論的な観点から取り組む為の足場を築けたことは、この研究の今後の展開に大きな可能性をもたらしてくれるのではないかと感じている。
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今後の研究の推進方策 |
射影平面内の一般的な位置にある有限な点集合に対して、その定義イデアルの自由分解を与える非輪状複体の構成を次数付の枠組みで試みたい。目標は、それをシンボリック冪の計算に応用することである。余力があれば、加群のシンボリックリース環という観点からCox環のネータ性を考察したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受け、年度末に予定していた出張がキャンセルになった為、次年度使用額が生じた。自由に移動することが可能になれば、研究集会への参加や研究打合せ等を目的とした出張で有効に使用する予定である。
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