研究実績の概要 |
本研究の目的は,代数多様体の射影空間への埋め込みの構造を,定義方程式,そのイデアルのシジジーなどの代数的な対象と線形射影や超曲面のなす線形束などの幾何学的な対象との相互関係に着目して調べることである.これまでの研究に引き続き,射影多様体Xが次数d,次元n,余次元eのとき,「Xを含む次数(d-e+1)以下の全ての超曲面の共通部分はXと一致する」「(d-e)次以上の全ての超曲面が作る線形束はX上で完備である」という問題の解決を目指して研究を行った.点からの線形射影が射影多様体Xとその像との間の双有理写像を引き起こさないような中心点を,その射影多様体Xの非双有理中心点とよび,そのうちXの内の非双有理中心点の集合をC(X)で表す. 平成29年度は,先ずこれまで得られていた研究成果である発表論文1,2についての再検討を行って問題点を探るとともに研究の方向を確認した.続いて,一般の内点からの線形射影の2重点因子について研究を行った.昨年度までは主に非特異射影多様体について研究を行ってきたが,非特異とは限らない一般の射影多様体へ対象を広げて研究した.その結果,第1に,射影多様体の間の余次元1で有限な射に対する双対性を,射影多様体が非特異であるという仮定をS_2の条件にゆるめて証明することができた.第2に,双対性を用いて,一般の内点からの線形射影の2重点因子が作る線形束の基点は,もしあれば,特異点の集合かC(X)に含まれることを証明することができた.また,具体的な射影多様体とその一般の内点からの線形射影の2重点因子の例についても研究を進めた.その過程を通じて,第3に,一般の内点からの線形射影の2重点因子が自明となる射影多様体の特徴付けを与えることができた.このことから,引き続き具体例での2重点因子について調べていくことが今後の課題であることが確認できた.
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