研究実績の概要 |
本研究の目的は,射影多様体の射影空間への埋め込みの構造を,定義方程式やそのイデアル,シジジーなどの代数的対象と線形射影や線形束などの幾何的対象との関係に注目して調べることである.射影多様体Xが次数d,次元n,余次元eのとき,「Xを含む次数(d-e+1)以下のすべての超曲面の共通 部分はXと一致する」「(d-e)次以上のすべての超曲面が作る線形束はX上で完備である」という予想を示すことを目指している. 点からの線形射影が射影多様体とその像との双有理写像を引き起こさないとき,射影の中心点を非双有理中心点と呼ぶ.非双有理中心点が射影多様体の外にあるときの非双有理中心点の全体を外セグレローカス,非特異な非双有理中心点の全体を内セグレローカスと呼ぶ. 2021年度は,外と内セグレローカスの既約成分の数の上限を与えた前年度までの結果のまとめに重点をおき,再検討と改良を行なった.特に,内セグレローカスの既約成分の上限について二重点因子の交点数とにより評価する部分の改良を行った.そのための基盤となる,二重点因子の基点集合が内セグレローカスのみであることを,非特異の条件を緩めた射影多様体に対しても成立するかどうかの検討を行った.これと,これまでも適用してきた過剰交点の計算の応用を合わせることによって,評価の改善をおこなった.これらを成果としてまとめることができた.ここで得られたセグレローカスの既約成分の個数の上限が,実際の場合に最適な条件であるかどうかの検証と更なる改良の検討は,引き続き研究すべき課題である.また技術的な観点から,過剰交点の計算の際に現れる重複度を幾何学的に特徴づけるという問題は,応用上でも重要であり今後の研究すべき課題である.
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