研究課題/領域番号 |
17K05198
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小島 秀雄 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90332824)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 代数幾何学 / 対数的小平次元 / 開代数曲面 / Qホモロジー射影平面 / 弱デルペッゾ曲面 |
研究実績の概要 |
今年度は主にQホモロジー射影平面上の尖点有理曲線、対数的小平次元が1以下となる開代数曲面、反標準因子がネフとなる代数曲面について、国内外の研究者と研究打ち合わせを行いながら研究を遂行した。今年度得られた研究成果は以下の通りである。 (1) Qホモロジー平面S内の非特異部分にある曲線Cで、Cの補集合の対数的小平次元が-∞になるものが存在するとき、Sが対数的デルペッゾ曲面でその非特異部分が単連結になることを示した。更に、Cの補集合の対数的小平次元が-∞で、Cの特異点の極小埋め込み解消による固有変換像の自己交点数が-2以下になる場合に、そのような対(S,C)を決定した。 (2) 任意標数での対数的小平次元がゼロとなる開代数曲面で、無限遠境界に可縮でない連結成分を持つものについて、その曲面の対数的極小モデルを構成し、対数的極小モデルとして現れる曲面を調べた。また、標数ゼロの場合に知られている、対数的小平次元がゼロとなるアフィン平面曲線の補集合の対数的幾何種数が1になることを正標数の場合にも証明した。 (3) 研究代表者が指導している大学院生と共同で、次数1の弱デルペッゾ曲面X上の点Pでのブローアップにより得られる代数曲面の反標準因子がネフになるための点Pに関する必要十分条件を得た。また、高々標準特異点のみを持つ、反標準因子がネフとなる正規代数曲面の最小特異点解消に関する大まかな分類を得た。更に、そのような曲面の非特異部分の基本群を一部の場合を除いて決定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は(1)補集合の対数的小平次元が-∞となる曲線を含むQホモロジー射影平面の構造、(2)非特異部分の対数的小平次元がゼロとなる正規アフィン代数曲面の構造、(3)正標数での非特異射影代数曲面上の因子のD次元と数値的D次元、について主に研究する予定であった。これらの内、(1)については、そのような曲面の非特異部分の基本群が分かり、部分的な分類結果も得られ、当初の計画以上に進展している。(2)については、不足数が1(対数的不正則数が1の場合に相当する)となる場合の考察が不十分であるが、既に、平面曲線への応用結果も得られており、十分な成果が挙がっている。(3)については、反標準因子がネフになる代数曲面に関する当初は予期していなかった成果を得たが、D次元と数値的D次元が異なる因子の分類については時間の関係もあるが、十分な成果は挙がらなかった。 今年度予定していた研究課題の内、一部の課題は順調に研究が進展していないが、当初の計画以上に進展している課題もある。研究開始当初から、予定通りに進展しないことも念頭に置き、かなり多くの研究課題を挙げていた。その中でも現段階で学術雑誌に掲載が決定した論文一編と論文一編を執筆中である。以上のことを踏まえ、現在までの進捗状況をおおむね順調に進展している、と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の研究内容から、当初予定していた研究計画のうち、やや研究内容や研究方法に具体性が乏しかった部分を修正し、また、新たに研究するべき課題が見つかった。このため、交付申請書に記載した研究実施計画を少し変更し、次年度は次のような課題について、研究を遂行する。 (1)ピカール数が1で高々有理的対数的標準特異点のみを持つ正規デルペッゾ曲面で、特異点が4個になる場合について、Qホモロジー射影平面やQホモロジー平面に関する結果と、非特異部分の対数的極小モデルを調べることにより、分類を行う。更に、この手法を用いて、特異点の個数が3の場合が分類できるかどうか調べる。高橋剛氏、岸本崇氏と協力しながら研究を遂行する。 (2)対数的小平次元がゼロとなる開代数曲面で、不正則数が正になるものについて、その対数的極小モデルとして表れる曲面の構造を調べる。また、対数的小平次元がゼロとなる、平面曲線の補集合の対数的幾何種数が正になるかどうか調べる。岸本崇氏、伊藤浩行氏と協力しながら研究を遂行する。 (3)2変数多項式環と2変数有理関数体における単項式導分(変数の像が単項式となる導分)の核を調べ、定数多項式でないものを核に含む場合を分類する。 上記の(1)と(2)の研究では、5月28日~6月1日にワルシャワで開催される国際会議に出席し、開代数曲面の世界的研究者である、K. Palka氏の協力も得る予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が86,267円弱生じているが、3月中の研究集会への出張旅費と研究を遂行する上で必要となる代数幾何学関係の図書の購入に充てた。
|