研究実績の概要 |
令和2年に予定していた研究討論は、コロナウイルス蔓延の影響で、全く実施できなかった。一方で、令和元年に計画していた, 構成可能層, 偏屈層, ホロノミックq差分加群の概念の構築, 柏原の意味でのリーマン・ヒルベルト対応の確立, カッツ・大島理論のq類似について, 令和2年度において進展があった。 基本的なq差分方程式の例に対し、その解複体を観察することで、それらが属すカテゴリーとして妥当なものは、単に(コホモロジカルに)連接なCq加群の複体のカテゴリーである、という知見を得た。ここで、Cqは擬定数の定める環の層である。偏屈層については、従来通りのサポートおよびコサポート条件で定める。 ホロノミックq差分加群を定義するためには、特性多様体のq版とは何か、を知ることが望ましい。その為にq解析学における超局所理論とは何か、ということを考察した。その結果、うまく「貼り合わせのできる超局所理論」をみつけることができなかった。それゆえ、特性多様体をうまく貼り合わせて大域的に構成することはできていない。しかし、ホロノミックq差分加群の定義までは得ることができた。 上記の定義を得たことで、本研究の主要テーマであるリーマン・ヒルベルト対応のq版を命題としてかけるようになった。 カッツ・大島理論については、そのオリジナル版を分析することに手をつけた。具体的には、楕円曲線上の1点で確定特異点をもつ階数2の微分方程式の解の積分表示を探すことから始めた。(この積分表示がわかれば、カッツ・大島理論で中心的な役割を果たすオイラー変換を見出すことが期待でき、カッツ・大島理論の核となる部分についての理解がすすむはずである。)やや間接的な形ではあるが、それにあたるものを見つけることができた。
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