研究課題/領域番号 |
17K05200
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
臼井 三平 大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (90117002)
|
研究分担者 |
中山 能力 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (70272664)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 混合ホッジ構造 / 分類空間 / コンパクト化 / 対数構造 / 対数的混合ホッジ構造 / 対数的モチーフ |
研究実績の概要 |
加藤和也・中山能力・臼井の混合ホッジ構造とその退化の分類空間に関する共同研究が続いており、この分類空間の様々なコンパクト化の間の関係を示す混合版基本図式の構成と整備をしている。この基本図式というのは、混合ホッジ構造の様々な極限と、それら相互の関係を与える写像の連続性や収束性や実解析性や複素解析性などを含む詳細な記述である。これらの構成には、境界点における情報を豊かに保つ対数構造を使う。この共同研究シリーズのIVとして、この基本図式についての論文が間もなく出版されることとなっている。続いてシリーズVとして、テンソル関手としての群作用付の場合への一般化をした論文の投稿版の仕上げをしている。また、Vの応用として高次アルバネーゼ多様体のコンパクト化をした論文が出版された。 この3人と伊藤哲史の共同研究として対数的モチーフについての論文を投稿した。対数的モチーフの圏と対数的混合モチーフの圏を定義した。前者の圏が半単純ということとこの圏では数値的同値とホモロジー同値が等価であるということが同値になることを証明した。さらに、後者の圏で見た場合には、これらの同値な条件と後者の圏が淡中圏であることとが同値であるということを証明した。テイト予想とホッジ予想を定式化し、曲線のとき検証した。 トレリ型問題を介して、上の基本図式は特異点の問題、多様体の問題、サイクルの変位の問題、モジュライの無限遠での挙動の問題などと関係してくる。 臼井は、多重対数関数についてのドリーニュの研究結果を高次アルバネーゼ多様体のコンパクト化の枠組で記述し、その論文を投稿した。これはホッジ構造が自明な場合である。これに続き、高次アルバネーゼ多様体のホッジ構造が非自明な場合に、基本図式に出てくる様々なコンパクト化の上で、3次元5次超曲面のA模型との関係を調べ、ミラー対称性の理解を深めようと思っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)加藤・中山・臼井の共同研究の混合ホッジ構造の分類空間に関するシリーズIV:混合版基本図式 が間もなく出版される。現在、このシリーズのV:群作用付の場合へ一般化した混合ホッジ構造の分類空間の基本図式の構成についての論文の投稿版を仕上げているところである。平行して、このシリーズVの幾何への応用として、高次アルバネーゼ多様体のコンパクト化を構成し、出版した。(以上は3人の共同研究) (2)対数的モチーフの圏と対数的混合モチーフの圏を定義し、前者の圏が半単純であるということとこの圏では数値的同値とホモロジー同値が等価であるということが同値となることを示し、さらに後者の圏で見た場合には、これらの同値な条件と後者の圏が淡中圏であることが同値であることを証明した。テイト予想とホッジ予想を定式化し、曲線のときに検証した。(これは4人の共同研究) (3)代表者は、多重対数関数についてのドリーニュの研究結果を高次アルバネーゼ多様体のコンパクト化の枠組で記述した。これはホッジ構造が自明な場合である。(現在投稿中) (4)対数的ホッジ理論を主課題とするワークショップが、東京電機大学と神戸大学で開催された。 交付申請書(D-2-1)の「研究の目的」に比べて、(1)は概略予測通りに進んでいる。シリーズVの投稿版仕上げは次年度まで持ち越した。(2)は予測通りに進んでいる。(3)は予測以上に進んでいる。(4)のうち神戸大学での開催は予測を超えた。
|
今後の研究の推進方策 |
加藤・中山・臼井による混合ホッジ構造の分類空間に関する共同研究シリーズV:群作用付混合ホッジ構造の分類空間の基本図式 の論文を仕上げて投稿する。これは、この課題についてのこれまでの我々の共同研究すべてを踏まえた形にし、かつ読みやすい論文に仕上げ、関係分野との交流がしやすくなるようにしたいと思っている。3人のこの共同研究シリーズの発展として、調和解析によるホッジ理論の対数版として、退化における有限次元実解析的ホッジ分解についての研究が進行中である。 加藤和也は2009年にシカゴ大学へ移ったので、実務的に分担者となってもらうのは困難となったが、加藤・臼井の共同研究は20年あまり、中山も加わっての共同研究は10年あまり続いており、現在も進行中である。普段はメールで議論をし、夏と冬の長期休暇に加藤が帰日したときに3人で出会ってセミナーをしており、このやり方を続ける。 臼井は高次アルバネーゼ多様体のホッジ構造が非自明な場合に、ベキ零軌道の空間だけでなく基本図式に出てくる他のSL(2)軌道空間やボレル・セール空間へ移して、3次元5次超曲面のA模型との関係を調べ、ミラー対称性の理解を深めようと思っている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に作成した交付申請書(D-2-1)の年度別の交付予定額をほぼ使い切ったので、予定通りに次年度の計画を実施する。
|