研究課題/領域番号 |
17K05203
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
橋本 光靖 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (10208465)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 標準加群 / n標準加群 / 次数付き加群 / 同型 / 直既約性 |
研究実績の概要 |
標準加群と n 標準加群の振る舞いに関しては、次数付き環の上の次数加群の枠組みで捉えることが重要である。このことについて、岡山大学大学院自然科学研究科の大学院生楊雲天君と共同研究を進め、次数付き環 R の上の次数加群が、単なる R 加群として直既約であるという条件が単なる次数付き加群として直既約である、という条件と同値であることに簡明な証明を与えた。このことは, Auslander と Reiten によって指摘され、彼らの論文で使われていたことであるが、印刷になった証明というのは知らない。このことを用いて、与えられた2つの次数付き加群が次数付けを無視して同型であることと、直既約成分ごとでの次数ずらしを無視した次数付き加群としての同型ということと同値であることが系として従う。また、ネータースキームの間の射の分岐跡について、Zariski-Nagata による分岐跡の純性が良く知られているが、この定理は射が準有限である場合の定理である。これを射が必ずしも準有限とは限らない有限型の射に拡張した。定理の証明には、標数0ではD加群、標数 p>0 に置いては G_a^n の超代数の上の module-algebra を援用して得られる。当該年度の終わりごろに、熊本大学での研究集会の講演を予定していたがキャンセルされた。また、英国の Petere Symonds 教授、イタリアの M. E. Rossi 教授を訪問し、講演をしたうえで研究成果についてレビューを受ける予定であったが、キャンセルされた。いずれについても新型コロナウイルス感染症の蔓延によるものであり、このことを理由に研究機関の延長を申請し、1年間の延長を認められている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
次数付き環の上の次数付き加群の直既約性とその次数付き加群の同型の問題に関する応用に関しては、数学的内容は当初見込んだ通りの成果が得られている。イギリス P. Symonds 教授、イタリア M. E. Rossi 教授との情報交換を前にして新型コロナウイルスが蔓延し、研究を完了することができなかった。これは当該年度末3月に研究の総括に関する日程を詰め込み、1か月のほとんどを熊本、イギリス、イタリアに出張して過ごすような日程を組んでいたところ、すべてが新型コロナウイルスの影響によるキャンセルにあい、それを回復できなかったことに原因がある。これについて、延長申請が認められたが、引き続き同じ形での研究は困難が続いているので、遠隔での連絡手段を充実させ、遠隔によって研究連絡を取るようにしている。遅れてはいるが、上記成果について、まとめに入ることができる状況である。Zariski-Nagata による純性定理の一般化については、これがヤコビアン予想という予想の解決に役に立つのではないかと考え、別の研究計画として申請し、認められ研究に入っている。
|
今後の研究の推進方策 |
イギリス P. Symonds 教授、イタリア M. E. Rossi 教授との研究打ち合わせについて、海外出張が原則認められていない状況であるので、方法をオンラインによることに切り替え、各種デバイスの整備を進めている。また、zoom による東京可換環論セミナー参加をはじめ、内外の研究者との交流を進めており、今後はそうしたセミナーの場も活用して、情報交換に努め、まとめを行う。基本的に、すでに得られている結果のまとめ、それに関する情報交換とそれから直接得られる成果のまとめに絞り、研究を今年度で終了させる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延により、国内1件、海外1件の出張がキャンセルとなり、使い切る予定に狂いが生じた。
|