研究課題/領域番号 |
17K05206
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
小林 正典 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (60234845)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トロピカル幾何 |
研究実績の概要 |
【トロピカル幾何の基礎】概形は単位的可換環から作られるが,その一般化として,より広い幾何的対象を条件を弱めた代数系から作れることが近年注目を浴びている.研究代表者は特にトロピカル多様体の定式化の観点から,付点モノイドによる概形に注目した.付点モノイドは単位的可換環から加法を忘れたものである(ただし0はもつことが重要である).まず出発点として梶原・Payneのトーリックトロピカル多様体に対する付点モノイドによる定式化といった基礎的事実について整理を行い,執筆を行いつつ首都大学東京と東北大学で講義を行った. 【トロピカル幾何の発展】種数の小さなトロピカル曲線の詳細な分類について東北大学談話会で研究発表を行った.また4月から8月までFalko Gauss氏(マンハイム大)を学振特別研究員(欧米短期)として受け入れ,トロピカル曲線などについての共同研究を開始した. 【トロピカル幾何の応用】工程計画問題への応用について,トロピカル多項式から元のネットワーク構造の情報を引き出す研究を継続した. 【その他】8月21日から25日まで玉原東京大学国際セミナーハウスで研究集会「代数幾何学サマースクール2017」(テーマ:Bridgeland安定性と壁越え)を共催した.その際情報収集の補助のため大学院生1名を同行させた.2月1日に京都大学で研究集会「トロピカル幾何ワークショップ」を共催した.8月8日の首都大学東京におけるトロピカル幾何研究集会で講演者旅費と茶菓子代の援助を行った.10月の城崎代数幾何学シンポジウムには指導する大学院生1名を派遣し情報収集補助を行った.これらの活動を通じて,トロピカル幾何を中心とする代数幾何の情報収集を行った.なお代数学に関する書籍を一点出版した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に挙げた内容のうち,特に情報収集と講演者の招聘については,複数の研究集会の共催や海外からの学振特別研究員の受入れなど,計画以上に進めることができた.また,トロピカル幾何の基礎付けについても,付点モノイドに特化して考えることでこの1年で大幅に整理が進んだと感じている. その一方で工程計画問題に対する共同研究は本年度は思うように進めることができなかった.ただしこの点は具体的方策をすでに立ててあるので特段の問題とはならないと考える.
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた結果をさらに進めて論文にまとめることが基本である.またトロピカル幾何等をテーマとする国際研究集会に参加して共同研究と情報収集を行う. トロピカル幾何の基礎付けをさらに進め,文献としてまとめる.トロピカル曲線について得られた知見についても論文にまとめる. 特異点に関しては最新の知見を得るために代数幾何サマースクールを共催する. 工程計画問題への応用についての共同研究を仕上げて論文にまとめる.これは初年度に遅れが見えたところであるので,特に次年度に重点的に推進する.例えば計算補助等にポスドクを短期間雇用したり,連携研究者とまとまった時間,研究集会等で議論をする機会を作ることにしている.研究時間の確保のため,サバティカル制度も活用する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度(平成30年度)にトロピカル幾何についての非常に重要な国際研究集会がリオデジャネイロ(ブラジル)で行われることが年度途中にわかった.もともと同市で開催される国際数学者会議2018に出席を計画してはいたが,延長して情報収集および連携研究者との共同研究を進めることが重要であると考え,そのため2名分の滞在費を追加で確保することが必要になった.已む無く優先度をつけて前年度の活動のいくつか(書籍の購入や海外出張等)を中止しそのための原資に充てることにした.
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