研究課題
今年度は、種数1のグロモフ‐ウィッテン不変量に対して、私がこれまで構築した多項式写像(擬写像)のモジュライ空間を用いたミラー対称性の計算過程の幾何学的再構成理論を拡張する研究を行った。得られた現在までの成果の一つは、カラビ‐ヤウ多様体の場合について、B模型(BCOV理論)から得られるミラー変換を行う前段階の母関数の展開係数を全く別の観点から再現する留数積分表示が得られた事である。ただ、この留数積分表示は、展開係数を再現するのはわかっているが、まだ擬写像のモジュライ空間を構成してその空間の位相的交点数として導出できるかどうかが不確定であるので、まだ公にはしていない状況である。もう一つの成果として、以前構成していたCP^{2}の種数0のグロモフ‐ウィッテンに対するミラー対称性的計算方法を、種数1のグロモフ‐ウィッテンに対して拡張する際となるB模型的グロモフ‐ウィッテン不変量の留数積分表示を得た事が挙げられる。これは、カラビ‐ヤウ多様体の場合と類似点はあるが、少し性格の異なる積分表示で、2021年の1月頃に発見した。この結果は、カラビ‐ヤウ多様体ではないファノ多様体に対してBCOV理論を拡張できる可能性を示唆しており、今後も追及して行きたい。なお、この留数積分表示も幾何的導出ができていないため公にはしていない。なお、これらの結果は、一応2021年2月に京都大学数理解析研究所の非公式セミナーで言及しておいた。後、別々の学生との共著による2編の論文(一つは数理物理的色彩が強く、もう一つは数学の論文である)が、学術雑誌に受理され一つは出版され、もう一つはweb上で公開され冊子体での出版を待つ状況となった。
2: おおむね順調に進展している
長年の懸案事項であった種数1のグロモフ‐ウィッテン不変量の研究において、独自の視点を発展させる糸口となる結果が得られたため、順調に進展していると判断した。
とりあえず、得られている留数積分表示を何らかの媒体で発表した後、それを幾何学的に導出する理論の構築に取り組みたいと思っている。
コロナの影響により、出張ができないなど活動が大幅に制限されたため。
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Journal of the Mathematical Society of Japan
巻: 73, NO.4 ページ: 995--1018
10.2969/jmsj/83148314
International Journal of Modern Physics A
巻: 35 ページ: -
10.1142/S0217751X20501924