研究課題
本年度は本研究目的の研究1:ボトルネック構造をもつ空間特有の幾何的性質、および調和解析的性質の導出において、Li-Yau型熱核評価を持つ非コンパクトリーマン多様体の、コンパクトな中心部分による有限個の連結和上の熱核評価およびポアンカレの不等式について研究を共同研究者である Bielefeld 大学の Alexander Grigor'yan教授、および Cornell 大学の Laurent Saloff-Coste教授と共同で行い、熱核の長時間挙動のシャープな評価を得ることができた。特に、全てのエンドが critical または subcritical であるとき、中心部分の熱核の挙動は、増大度が最も大きいエンドにより決定されるという結果を得た。本結果は Journal de Mathematiques Pures et Appliquees に投稿し、受理された。現在この結果をより一般の parabolic 多様体の場合に拡張する研究を行っている。また、この熱核評価と密接な関係のあるポアンカレ不等式 について研究を行い、subcritical でないエンドが1個以下であるときはポアンカレ不等式が成り立ち、2個以上だと不成立であることを明らかにした。本結果は現在論文投稿準備中である。研究2:複雑な構造をもつ空間上の新しい幾何解析的現象の研究において、ベキ零被覆グラフ上の非対称ランダム・ウォークの長時間漸近挙動の研究を慶應義塾大学の河備浩司教授、および岡山大学博士課程在学中の難波隆弥氏と共同で行い、グラフの調和な埋め込みを用いることで推移作用素からなる半群が、ベキ零Lie群上の sub-Laplacian に非対称性から生じる drift 項のついた生成作用素からなる半群に収束させることができることを明らかにした。この結果は現在論文投稿準備中である。
2: おおむね順調に進展している
初年度の段階で熱核の詳しい挙動、およびラプラシアンのスペクトルの評価とみなすことができるポアンカレ不等式について明らかにできたことはおおむね研究計画通りの成果であるといえる。
今後は一般のparabolic 多様体の連結和における熱核の挙動、および、non-parabolic多様体の場合も含めた一般の連結和におけるポアンカレ不等式についての研究を行うよてである。また、研究目的の研究2の、より複雑な空間、特異性のある空間やグラフ上の連結和上の熱核(推移確率)の挙動やスペクトル幾何的な性質についての研究に着手する予定である。
すべて 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
Mathematical Physics and Computer Simulation, Volgograd State University
巻: 20 ページ: 77-88